Outlookのアドレス帳をインポートで失敗しない完全実務ガイド

Outlookのアドレス帳インポートで一度でも「よく分からないまま押し進めた」ことがあるなら、その瞬間からあなたの時間と信用はじわじわ目減りしています。旧PCから新PCへの移行、別ソフトやExcelからの取り込み、Web版Outlook.comとデスクトップ版の行き来──見かけは同じ「インポート」でも、保存先とデータ形式を読み違えた瞬間に、連絡先の消失・重複・社内クレームが一気に現実化します。

多くの人がつまずく理由は単純です。
「クラシックOutlook」「新Outlook」「Outlook.com」の区別があいまいなまま、CSVやPSTといった形式だけを真似しているからです。公式ヘルプは正しい操作を教えてくれますが、「あなたの環境ではどのルートを選ぶべきか」「どこで失敗しやすいか」までは整理してくれません。その結果、同じ手順でも人によって成否が分かれ、「一部の連絡先だけ無い」「スマホにはあるのにPCに出てこない」といった厄介な状態に陥ります。

この記事は、Outlookのアドレス帳インポートをバージョン・保存先・データ形式・運用人数の4軸から分解し、「自分はどのルートを選ぶべきか」を最初に確定させます。そのうえで、旧PC→新PC、Excel/CSVからの取り込み、Web版↔デスクトップ版の同期、部署単位の大量インポートまで、現場で実際に起きている事故パターンと回避手順をすべて紐づけます。感覚ではなく、再現性のあるフローとして「失敗しないインポート」を手に入れてもらう設計です。

このガイドを読み進めることで、次のような状態を狙います。

• どの画面から始め、どの形式を選べば安全かを3分で判断できる
• 文字化けや重複登録が起きても、どこまで巻き戻せるかを事前に見積もれる
• 部署全体のアドレス帳を扱うときでも、「テスト移行」と「ロールバック」を前提に動ける

まず、この記事全体で得られる実利を俯瞰しておきます。

Outlookのアドレス帳インポートは「一度なんとなく成功した」経験に頼るほど危険度が増します。ここから先は、総務・営業・情シスそれぞれの立場で、どの選択をするとリスクが跳ね上がるのか、逆にどの段取りを踏めば事故が起きても最小で止められるのかを、具体的な画面と手順に落としていきます。

まず「自分のケース」を3分で判定：どのアウトルックアドレス帳インポートルートを選ぶべきか

「とりあえずインポート」を始めた瞬間から事故は始まります。先に自分のケースを3分で仕分けしておくと、その後の作業が一気に楽になります。

旧PC→新PC／他ソフト→Outlook／Web版→デスクトップ版…よくある4パターンを図解で仕分け

Outlookの連絡先インポートは、ざっくり次の4パターンに分かれます。
まずは自分がどこに当てはまるかを決め切るのがスタートラインです。

自分がどれか1つにきちんと当てはまれば、その時点でゴールの半分は終わっています。
「AとCが混ざっている」「Dのつもりが実はAだった」といったケース混在が、現場で一番トラブルを生みます。

CSV・PST・Excel…どの形式を選ぶと安全かを“失敗リスク”から逆算する

形式選びは「何ができるか」よりも、どこで失敗しやすいかから考えた方が安全です。

現場感覚で言うと、「OutlookからOutlook」はPST、それ以外はCSVを軸に考えると事故が少なくなります。
「全部PSTで持ち運べば万能」と見なすやり方は、のちほど触れるように権限面でも運用面でもリスクが跳ね上がります。

ペルソナ別によくある勘違い：「総務・営業・IT担当」で選ぶべきルートは微妙に違う

同じ「連絡先インポート」でも、担当者の立場によって安全なルートが変わります。

• 総務・事務担当

  • 社員のPC入替や異動がメイン。
  • 基本は「Aパターン＋PST」。ただし必ずテスト用アカウントで一度試すのが鉄則。
  • CSV編集は負荷が高いので、Excelでの前処理はIT担当に相談した方が安全。

• 営業担当・個人利用ユーザー

  • Excelで管理してきた顧客リストをOutlookで使いたい「Cパターン」が多い。
  • いきなり全件CSVインポートせず、まず5件だけテストする運用に切り替えるだけで、トラブルの大半を防げる。

• 情シス・なんちゃってIT担当

  • A〜Dすべてを一手に引き受けがち。
  • 「とりあえずPST一括」は楽だが、のちの権限問題・情報持ち出しリスクが大きい。
  • 利用シーンごとにPST（バックアップ）＋CSV（配布用）を使い分ける標準ルールを決めておくと、後続の問い合わせ工数が目に見えて減る。

ここまで整理した上で、「自分はAパターンの総務担当だから、PST＋テスト移行から始める」といったレベルまで言語化できているかどうかが、インポート作業の成功率を左右します。

Outlookアドレス帳インポートの全体像：なぜ「同じ操作なのに失敗する人」が多いのか

「[ファイル]→[開く/エクスポート]→[インポート/エクスポート]をクリックしただけなのに、相手は成功して自分は失敗」。現場でよく聞く話です。
原因は“クリック回数”ではなく、保存先・形式・権限を理解しているかどうかにあります。

多くの人は、画面に出てくるウィンドウの案内に従ってpstやCSVファイルを選択しているだけですが、実際には次の3つを外すと高確率でつまずきます。

• どのOutlook（クラシック/新Outlook/Outlook.com）に入れるのか

• どのストア（Exchange/Outlook.com/ローカルpst）に保存するのか

• 会社のポリシー上、その操作をしてよいのか

この「前提条件」がズレたまま操作しているため、完了メッセージは出るのに連絡先が表示されない状況が量産されます。

クラシックOutlookと新Outlook、Outlook.com…見た目より怖い“保存先”の違い

同じ「Outlook」という名前でも、連絡先の居場所は大きく違います。

「旧PCではクラシックOutlookのローカルpst、今のPCでは新Outlook＋Exchange」という組み合わせは特に危険です。エクスポートしたpstファイルをインポートしても、実際には別のプロファイルに保存されていて、[連絡先]ビューに出てこないケースが頻発します。

公式ヘルプに書かれていない「前提条件」チェックリスト（ここを飛ばすと必ずハマる）

操作前に、次のチェックだけは紙に書いて確認しておくと事故率が一気に下がります。

• 使用中のOutlook種類

  • クラシックOutlook / 新Outlook / Outlook.com のどれか

• 保存先のストア

  • Exchange/Outlook.com/ローカルpstのどれに連絡先を保存したいか

• ファイル形式

  • pstで丸ごと移行か、CSVで連絡先だけか

• 権限とルール

  • 情報システム部門のルール上、pst持ち出しが許可されているか

• テスト用アカウントの有無

  • 5件だけインポートして結果を確認できる環境があるか

Microsoftの公式情報はフィールドやボタンの名称は正確ですが、この「そもそもどこに入れるのか」「会社としてやってよいのか」という前提は読者側で判断する前提になっています。ここを文章で補強しておかないと、総務担当が良かれと思って作成したファイルが“規程違反のバックアップ”扱いになることもあります。

実務でよくあるトラブルの根本原因3つ：「場所」「形式」「権限」

現場で見てきたトラブルの多くは、細かいクリックミスではなく次の3つに集約されます。

1. 場所の誤解（保存先・表示先のズレ）

   • 連絡先はインポートされているのに、別のデータファイルに保存されていて[連絡先]ビューに表示されない
   • Outlook.comに入ったデータを、クラシックOutlookのローカルビューで探して迷子になる

2. 形式の選択ミス（pstかCSVかの判断を誤る）

   • 部署全体で使うアドレス帳なのに、個人のpstに保存して属人化
   • CSVインポートでフィールド一致を確認せず、「姓名が逆」「表示名が空」の状態で完了してしまう

3. 権限・ポリシーの見落とし

   • BYODや在宅勤務で、自宅PCに会社のpstファイルを保存してしまい情報漏洩リスクが発生
   • 共有メールボックスの連絡先を、個人アカウントで勝手にエクスポートし、監査で問題になる

この3点を最初にテーブルやメモで整理し、その上でインポートウィザードの[参照]や[保存]先を選択していくと、同じ「クリック数」でも結果はまったく変わります。
見た目は単純な操作でも、実態は“データの引っ越し設計”だと捉えると、判断すべきポイントがクリアになります。

旧PCから新PCへOutlookアドレス帳をインポートするときに起きがちな事故と回避術

「朝からやってるのに終わらないPC入替」になりやすい原因の半分は、PSTファイルと保存先フォルダの勘違いです。旧PC→新PCの連絡先移行は、手順自体は単純でも、1つ判断を誤ると営業全員のアドレスが行方不明になります。ここでは、現場で本当に多い事故パターンだけに絞って整理します。

PSTインポートでありがちな「別プロファイルに入れてしまう」事故の実例とリカバリ手順

PSTインポートで典型的なのが、「インポートは完了したのに、連絡先がどこにも見当たらない」ケースです。原因の多くは、次のどれかです。

現場での安全なリカバリ手順は、次の流れが鉄板です。

1. 新PCのOutlookを閉じる
2. コントロールパネルから「メール」→「プロファイルの表示」を開き、プロファイル名を確認
3. Microsoft Outlookを再起動し、正しいプロファイルを選択して開く
4. ファイル → アカウント設定 → データファイルで、対象pstが「既定」に設定されているか確認
5. 必要に応じて、ファイル → 開く/エクスポート → Outlookデータファイルのインポートで、保存したpstを「現在のフォルダーにインポート」せず、「同じ名前のフォルダーにインポート」を選択

ポイントは、「インポートの前に、連絡先が入る“器”（既定のデータファイル、プロファイル）を確認する」ことです。ここを確認せずにクリック連打すると、探しものが別の倉庫に届きます。

一見うまくいったのに「一部の連絡先だけ無い」ケースの原因（フィルタ・ビュー・キャッシュの罠）

「件数は合っていそうなのに、取引先Aさんだけ見つからない」という相談も多く、原因はインポート失敗ではなく表示側の設定であることが少なくありません。

代表的な原因は次の3つです。

• フィルタ設定

  連絡先フォルダーの表示 → 現在のビュー → ビューの設定 → フィルターで条件が残っている。部署名や会社名で絞り込まれたままになっているケースが多い。

• 並び替え・グループ化

  姓・名フィールドの並び替えで、予想外の順番になっている。表示 → 現在のビュー → ビューの変更 から「名刺」表示に切り替えると発見しやすい。

• オフラインキャッシュ

  ExchangeやMicrosoft 365環境で、.ostの同期が終わる前に検索している。新PCの初期設定直後は、ステータスバーの「すべてのフォルダーが最新です」を確認してから検索する。

「本当にインポートされていないのか」「あるけれど見えていないだけか」を切り分けるには、検索ボックスでメールアドレスの一部を入力し、すべてのOutlookアイテムを対象に検索するのが早道です。これでヒットすれば、失敗ではなくビュー設定の問題と判断できます。

総務・情シスが実務で使う“テスト移行”の段取り：1発勝負を避けるための現場フロー

社員50人分の連絡先を1回でインポートしようとすると、どこかで必ず想定外が起きます。現場でトラブルを減らしている担当者は、必ず「テスト移行」を挟んでいます。

おすすめのフローを、実務向けに圧縮するとこうなります。

1. 旧PC側でエクスポート

   • ファイル → 開く/エクスポート → インポート/エクスポート
   • 「ファイルにエクスポート」→「Outlookデータファイル（.pst）」→「連絡先」を選択し保存

2. テスト用ユーザー1名を選ぶ

   • 営業など、連絡先が多く運用もシンプルな人を代表にする

3. 新PCでテストインポート

   • 上記のpstを使い、その1名分だけインポート
   • 件数・表示名・メールアドレス・部署のフィールドが想定通りかを確認

4. 社内で「OK項目」をチェックリスト化

   • 例：表示名の形式、配布リストの扱い、スマホの連絡先との整合性

5. 本番インポート

   • 問題がなければ残りのユーザー分を順次実施
   • 作業前の状態を戻せるよう、必ず新PC側も事前にpstバックアップを作成しておく

このテスト移行は、時間を食うどころか、結果的に「やり直し工数」を激減させます。1件でも想定外のフィールド一致ミスが見つかれば、本番前にCSVやフィールドマッピングを見直せるため、残業や深夜の問い合わせを避ける保険になります。

Excel・CSVからOutlookアドレス帳をインポートするときの“文字化け地獄”を避ける方法

Excelの一覧をそのままOutlookにインポートしたら、氏名が「????」、会社名が空白、メールアドレスだけがポツン…。現場で一番多いのは「操作ミス」ではなく、ExcelとCSVとOutlookの“言葉が合っていない”ことです。ここを押さえると、インポートは一気に安定します。

「CSVが読めません」「?になりました」相談の裏側：文字コードと列名の地雷原

CSVでのインポート相談を分解すると、多くが次の2つに集約されます。

• 文字コードが合っていない

• 列名・フィールド名がOutlookと噛み合っていない

現場でよく使うチェック順は次の通りです。

1. 文字コードの確認

   • Microsoft 365 / 新Outlook / Outlook.comはUTF-8推奨
   • 古い環境や他ソフトからのエクスポートはShift_JISのCSVが混ざりやすい
   • メモ帳で開いたときに日本語が崩れていたら、そのCSVは“地雷候補”

2. 保存方法の確認

   • Excelの「名前を付けて保存」で*CSV UTF-8(コンマ区切り)(.csv)**を選択
   • 既存CSVを上書きしない。テスト用に別名作成しておく

3. Outlook側のインポート手順

   • クラシックOutlookなら「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
   • 「他のプログラムまたはファイルからのインポート」→「CSV(コンマ区切り)」を選択
   • 誤ってpstを選んで「ファイルが違います」と言われて止まるケースも多い

文字コードを揃えたうえで、インポートウィザードの途中に出る「フィールドの一致」画面を飛ばさないことが、文字化け以外のトラブルを防ぐ最短ルートです。

Excelの列設計とOutlookのフィールドマッピングを合わせ込むコツ（姓・名・表示名・部署…）

同じCSVでも、「どの列をどのフィールドに入れるか」で仕上がりがまったく変わります。営業部からよく出る不満は「検索しづらい」「表示名がバラバラ」。原因の多くは、Excelの列設計とOutlookのフィールドが噛み合っていないことです。

代表的な対応表を整理すると、迷いがかなり減ります。

実務でのコツは次の3つです。

• Excel側で列名を先に“Outlook寄り”にそろえる

  • 例:「メールアドレス1」→「メール」など、迷わない名前に変更

• インポート時、「フィールドの一致」でドラッグ&ドロップして正しいフィールドに割り当てる

• テストとして5件だけのCSVを作成し、表示名と検索動作を確認してから本番データを流す

これだけで、「表示名が名字だけ」「カレンダー招待で名前が読めない」といった細かいストレスをかなり回避できます。

小規模アンケートで見えたつまずきポイント：半数以上が実はExcel側の準備で止まっている

情シス・総務向けのヒアリングで、「Outlook連絡先のインポートで一番時間を使ったポイントはどこか」を尋ねると、体感で半数以上が“Excelの準備段階”と答えています。操作そのものより、次のようなところで手が止まりやすいからです。

• 同じ相手がExcel上で複数行に分かれている（部署違い・メアド違い）

• 「氏名」と「氏名(フリガナ)」が混在し、どちらを表示名にするか決めきれない

• 会社名・部署名のゆらぎ（例:「営業部」「営業」「営業１課」）を、この機会に統一したくなる

ここを雑に進めると、Outlookにインポートしたあとで検索が利きにくいアドレス帳が量産され、結局担当者が手作業で直し続けることになります。

短時間で終わらせるための現場フローは次の通りです。

1. 元のExcelをコピーし、「インポート用_日付」ファイルを作成しておく
2. 上の表を参考に、列名と中身のゆらぎを30分だけかけて整える
3. 5件だけ抽出したテストCSVを保存し、Outlookにインポート
4. 表示名・部署・検索結果を確認してから、全件CSVを作成し本番インポート

インポートボタンをクリックする前に、この“Excel側30分”を挟むかどうかで、その後数カ月の運用ストレスが大きく変わります。仕事でOutlookを使う時間が長いほど、この差はそのまま「残業時間」と「信用」に跳ね返ってきます。

Web版Outlook.com ↔ デスクトップ版Outlook：連絡先がどこに行ったか分からなくなるパターン

「スマホにはちゃんと出るのに、PCのOutlookには出てこない」。アドレス帳インポート相談で、一番“沼”になりやすいのがこのパターンだ。操作ミスではなく、連絡先が保存されている“ストア（保存場所）”がバラバラなことが原因のケースが圧倒的に多い。

「スマホにはいるのにPCに出てこない」相談で判明した“ストア”の分断問題

同じOutlookという名前でも、連絡先の保存先は複数ある。スマホはOutlook.comアカウントと同期しているのに、PCはローカルPSTにしか表示していない、という状態が典型例だ。

よくある組み合わせを整理すると、問題の起きやすいパターンが一目で分かる。

まず確認すべきは、「どのアカウントに連絡先が紐づいているか」であって、インポート操作そのものではない。ここを見誤ると、何度CSVファイルをインポートしても“別の箱”に入れているだけになり、検索してもヒットしない。

Exchange/Outlook.com/ローカルPST…アドレス帳の“居場所”を見抜くチェックポイント

トラブル相談を受けるとき、最初の5分で必ず確認しているのが次の3点だ。

• アカウントの種類を確認

  • Outlookデスクトップ版: 「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」→種類が「Microsoft Exchange」「Outlook.com」「POP/IMAP」かをチェック

• 連絡先フォルダーの場所を確認

  • ナビゲーションウィンドウの「連絡先」/「People」で、どのデータファイル（pst / Exchangeメールボックス）配下かを確認

• Web版Outlook.com側の連絡先を確認

  • ブラウザでOutlook.comにサインイン→左下「人（People）」をクリック→スマホと件数が一致するかを見る

この3つを押さえると、「そもそもインポート前に、連絡先がどこに保存されているか」が見えてくる。居場所が分かれば、CSVやpstファイルでどのストアにインポートすべきかも自動的に決まる。

新Outlook導入後に増えた「連絡先が消えたように見えるだけ」問題と表示ビューの落とし穴

2023年以降、新Outlookへの切り替えで増えたのが、「インポートしたのに連絡先が表示されない」という相談だ。多くの場合、実際にはデータは入っており、表示設定（ビュー）だけが原因になっている。

確認すべきポイントは次の通り。

• ビューの絞り込み

  • 新Outlook・Outlook.comのPeople画面で、「フィルター」→「すべての連絡先」になっているか

• 表示するアカウントの選択

  • 新Outlook左側の「連絡先」下で、Exchange/Outlook.comのどのアドレス帳を表示しているか

• オフラインキャッシュの遅延

  • クラシックOutlookでExchangeを使っている場合、インポート直後はオフラインデータ（ostファイル）が更新中で、数分遅れて表示されることがある

「消えた」のではなく、「別ストアに入っている」か「ビューの条件から外れている」だけのケースがかなりの割合を占める。インポート前に保存先と表示ビューを押さえておけば、無駄な再インポートやCSVの作り直しを避けられる。

部署・チーム単位での大量インポート：1件のミスが全社トラブルに化ける瞬間

部署単位でのOutlookアドレス帳インポートは、「1クリックで全員の仕事環境を書き換える」作業です。1000件の連絡先ファイルを一度に流し込めば気分は爽快ですが、1件の誤登録が全営業部の誤送信・クレーム・お詫び日程調整まで連鎖する現場もあります。

ポイントは、技術より「段取り」と「巻き戻し設計」です。

1000件以上のアドレス帳インポートで現場が実践する「分割」と「ロールバック」の設計

大量データは、「一気にやらない」「必ず戻せる形でやる」が鉄則です。

「5件だけテスト用CSVを作成し、同じフィールド構成で本番用CSVに広げる」運用にすると、フォーマット不一致や文字化けを事前に潰せるため、情シスの駆け込み相談が大きく減ります。

誰のOutlookに入れるのか？「個人用」「共有用」「配布リスト」で運用が破綻したケース

トラブルの多くは、どの「器」に入れるかを決めないまま作業を始めることから始まります。Outlookの連絡先は、大きく3つに分かれます。

大量インポートを行う前に、最低限次を決めておくと事故が激減します。

• 「社内共通アドレス帳」は共有用の連絡先フォルダーに集約する

• 営業担当だけが使う顧客リストは、個人用にCSVインポート

• 一斉メールは「配布リスト」ではなく、可能な範囲で配信ツールやMicrosoft 365グループも検討

誰のOutlookに入れるか曖昧なまま作業すると、「Aさんだけ新しいアドレス」「Bさんだけ古いまま」というカオス状態から戻すのに、インポート作業の3〜5倍の時間がかかるケースがあります。

情シスがやりがちな“効率優先ショートカット”が、後で何倍の工数になったかの実例

現場でよく見るのが、次のような“時短テク”です。

• 1つのpstファイルに全ユーザー分の連絡先をエクスポートし、それを各PCでインポート

• 部署ごとのCSVを作らず、「全部入りCSV」を全員の個人用連絡先にインポート

• フィールドのマッピングを確認せず、「次へ」「完了」を連打

短期的には早く終わりますが、あとから次のような工数が発生しがちです。

• 部署ごとに不要な連絡先を手作業で削除

• 表示名がバラバラ（姓・名の順序違い）で検索にヒットせず、「アドレスがない」と問い合わせ連発

• 共有すべき連絡先が個人用に散らばり、異動や退職のたびに情報が消える

結果として、「1時間で終わらせたつもりのインポート」が、数週間単位の問い合わせ対応と手直しに化けることもあります。効率化するなら、クリックを減らすのではなく、

• CSV・pstの事前設計

• バックアップとロールバックの仕組み

• 個人用/共有用/配布リストの役割分担

を最初に整理する方が、トータルの工数は確実に小さくなります。

よくある相談LINE/メールを再現：「この状態から戻せますか？」へのプロの回答

「Outlookの連絡先、触ったら終わりそうで怖い」──現場で飛んでくる相談は、だいたい“作業途中で手が震えた瞬間”に届きます。ここでは、実際に多い3パターンを、プロがどこまで戻して・どこから手作業になるかを冷静に切り分けます。

CSVインポート後に重複だらけになったケース：どこまで戻せて、どこからは手作業になるのか

典型的なのが「CSVインポートしたら同じ連絡先が3件ずつ表示されるようになった」という相談です。

まず押さえたいのは、CSVインポートは“上書き”ではなく“追加”になりやすいという仕様です（Outlookのバージョンと選択肢による）。Microsoftの画面でも「重複した連絡先をインポートする」か「既存の連絡先を置き換える」かを選ぶウィンドウがありますが、慣れていない総務・営業ほど見落とします。

重複が起きたときの「戻せるライン」はこのあたりです。

プロが最初にやるのは、バックアップの有無を確認し、削除ではなく「別フォルダに避難させる」ことです。いきなり削除すると、後から「1件だけ必要だった」ケースで詰みます。

シンプルな安全手順は次の通りです。

• 既存の連絡先をpstファイルにエクスポートして保存

• 「インポート前」「インポート後」のフォルダを分けて作成

• CSVは必ずテスト用に5件だけ作ってインポートし、フィールドの一致と文字化けを確認してから本番実行

この3ステップを守っていれば、「重複だらけになりました」という相談は“戻せる事故”で終わります。

「インポートしたのに検索で出てこない」問い合わせでまず確認する3つの項目

「たしかにインポート完了と出たのに、名前で検索しても連絡先がヒットしない」という声も多いパターンです。ここで焦って再インポートすると重複地獄に入ります。

プロが必ず見るチェックポイントは3つだけです。

1. 保存先フォルダが違う

   • クラシックOutlookの場合、「連絡先」ではなく別の連絡先フォルダやローカルpst側に入っていることが多いです。
   • ナビゲーションの「フォルダ」表示に切り替えて、どこにインポートしたかを一覧で確認します。

2. ビュー設定で“見えていない”

   • 「現在のビュー」が「Outlookの連絡先」以外（たとえばカスタムビューやフィルタ付き）になっていると、新しいデータが非表示になります。
   • ビューを標準に戻し、「すべてのフィールド」を一時的に表示して、作成日時が新しいアイテムがあるか確認します。

3. 検索範囲が限定されている

   • 検索ボックス左側の「現在のフォルダー」「すべてのメールボックス」などの設定で、連絡先フォルダが対象外になっていることがあります。
   • 「すべての連絡先」に相当する範囲に切り替えて再検索します。

この3つを順に潰すだけで、「消えた」と思われた連絡先の多くは“そこにいるのに見えていなかっただけ”と判明します。

実際のやり取り例：総務担当からの深夜メールと、翌朝までに間に合わせた復旧手順

最後に、ペルソナそのもののケーススタディです。

• 状況

  • 40代総務担当が、営業20人分の連絡先を新PCのOutlookにインポート中
  • ExcelからCSVを作成し、Microsoft 365のクラシックOutlookにインポート
  • 深夜に「連絡先が3倍になりました…明日の朝イチまでに戻せますか？」とメールが飛んでくる

• プロ側のヒアリングポイント

  • インポート前にpstエクスポートをしているか
  • CSVインポートのときに選択したオプション（重複時の扱い）
  • 連絡先フォルダの件数スクリーンショットが残っているか

このケースでの復旧フローは次の通りでした。

1. 現在の連絡先フォルダをまるごとエクスポートしてpst保存（最悪時の命綱として）
2. 深夜前に作ったバックアップpstを新しいOutlookプロファイルにインポートし、「正常な状態」の件数と内容を確認
3. 問題が起きた本番プロファイル側では、「作成日時」でソートし、インポート実行時刻以降のアイテムを別フォルダへ移動
4. 移動先フォルダをCSVにエクスポートし、「本当に全部重複か」をExcelで確認（メールアドレスで重複チェック）
5. 完全に重複だけと判断できた段階で、そのフォルダを削除

ポイントは、削除ではなく「別フォルダ」と「別プロファイル」を使って“比較できる状態”を作ることです。これなら、朝の営業ミーティング前でも、最低限「元通りの連絡先」を保証できます。

このレベルの段取りを一度体験しておくと、次からは「まずpstでエクスポート」「5件だけテストインポート」という“守りのクセ”が付き、Outlookのアドレス帳インポート作業が一気に安全側に倒れます。

公式ヘルプだけでは分からない、「古い常識」と「今はNGなやり方」をあえて否定する

「前任者のやり方をそのまま踏襲したら、情報システム部から怒られた」
Outlookの連絡先インポートで、今いちばん危ないのは“昔の成功体験”を信じ続けることです。Microsoftの公式ヘルプは操作方法は教えてくれますが、「それ、今の運用ではアウトですよ」という線引きまではしてくれません。

「とりあえずPSTで全部持ち運べば安心」は本当に安全なのか（権限・情報漏洩の観点から）

PSTファイルは、メール・カレンダー・連絡先を丸ごと保存できる便利な「スーツケース」です。ただし、今のコンプライアンス基準では、“中身が見放題のスーツケースを社外に持ち出している”のと同じ扱いになります。

代表的なリスクを整理すると次の通りです。

PSTでアドレス帳をインポートする場合、最低限押さえたいポイントは3つです。

• 連絡先だけのPSTを作成する（エクスポート時に「連絡先」フォルダーのみ選択）

• 保存先を社内ファイルサーバーに限定する（USBでの持ち運びを禁止）

• インポート担当者の権限をログに残す（誰がどのPSTを読み込んだか）

「PSTは悪」ではありませんが、“全部入りPSTを個人裁量で持ち運ぶ”運用は、もはや時代遅れです。

Excelで顧客リストを管理し続ける運用が、Outlook連絡先と二重管理になって破綻した事例

現場でよく見るのが「営業部のマスタはExcel」「メール送信はOutlook連絡先」という二重管理です。一見安心感がありますが、更新のタイミングがズレた瞬間に信用を溶かします。

よく起きるパターンを簡単にまとめます。

• Excel側で担当者名・メールアドレスを更新

• しかしCSVエクスポート→Outlookインポートを月1回しかやらない

• 営業が古い連絡先でメールを送り、退職済み担当者に機密情報を送信

• 「Excelは新しいのに、Outlookが古い」と責任のなすり合いになる

二重管理を続けるなら、ルールを“数字で”決めておく必要があります。

• 更新の締切日とインポート日程を固定する（毎週火曜10時など）

• CSVファイル名に「customers_20250304.csv」のように日付を必ず含める

• Outlook側の連絡先ビューに「作成日」「変更日」フィールドを表示しておく

Excelを完全に捨てるのが難しい現場でも、「どちらが正だとみなすか」と「いつ同期するか」を決めていない二重管理は、必ず破綻するという前提で設計した方が安全です。

大量インポートより“日次の小さな更新”に切り替えた現場で、トラブル相談が激減した理由

「期末に顧客リスト一括更新」スタイルは、作業担当からすると楽に見えますが、失敗したときのダメージが桁違いです。
数千件のCSVインポートが一度こけると、重複・文字化け・フィールド不一致が絡み合い、「どこからやり直すか」の判断だけで1日潰れることもあります。

そこで、ある組織では発想を逆転し、毎日10〜20件レベルの“小さな更新”運用に切り替えました。ポイントはこの3つです。

• 新規・修正・削除をExcelのシートで区分け（Status列に「New」「Update」「Delete」）

• 1日分だけCSVエクスポートし、Outlookにテストインポート（5件程度）してから本番実行

• インポート完了後に、対象日のCSVとOutlook画面をスクリーンショットで保存

この方式にすると、トラブル発生時も「その日の数十件だけロールバックすればよい」状態になります。
結果として、情シスや総務に飛んでくる「Outlookのアドレス帳がぐちゃぐちゃになりました」という相談は目に見えて減りました。

大量インポートは効率的に見えて、実は「一度のミスで全社の信頼を削るハイリスク投資」です。
“日次の小さな更新＋テストインポート”は、作業時間は少し増えても、残業とクレームを確実に減らす現場寄りの解決策と言えます。

失敗しないための「事前バックアップ」と「テストインポート」テンプレート

本番インポートで冷や汗をかくか、淡々と終わらせるかは、この章のやり方でほぼ決まります。

インポート前に最低限やっておくべき3つのバックアップ（PST・CSV・スクリーンショット）

アドレス帳インポートで「完全に元に戻せる状態」を作るには、形式の違うバックアップを重ねておく方が安全です。

• PSTバックアップ（Outlook丸ごと型）

  • クラシックOutlookの「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」→「ファイルにエクスポート」→「Outlookデータファイル（.pst）」
  • 連絡先フォルダーを選択し、パスワード設定も検討（持ち出し制御用）

• CSVバックアップ（連絡先一覧型）

  • 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」→「ファイルにエクスポート」→「CSV（カンマ区切り）」
  • Excelで開いて、フィールド（姓・名・表示名・メールアドレスなど）が正しく出力されているか確認

• スクリーンショット（状態記録型）

  • 連絡先の「表示」を一覧に切り替え、代表的な数件が見えるようにキャプチャを保存
  • 「どのフォルダーに、どんな表示名で入っていたか」を後から検証できる

よくあるのは「PSTだけ取ったが、どのフォルダーを選んだか覚えていない」というケースです。CSV＋スクリーンショットを重ねると、フィールドの一致確認や件数チェックが格段に楽になります。

5件だけのテストインポートで、本番トラブルの8割を事前に潰せる理由

一気に何百件もインポートしてしまうと、問題が起きた際の「原因切り分け」がほぼ不可能になります。現場では、必ず5件前後のテストインポートを挟みます。

テストインポートで確認するポイントは次のとおりです。

• 正しいフォルダーに入ったか（個人用の連絡先か、別のアドレス帳か）

• 文字化けしていないか（氏名・会社名・部署名）

• 表示名のルールが崩れていないか（「姓 名」か「会社名＋担当者名」か）

• 重複の扱い設定が狙いどおりか（上書き/追加/スキップ）

この「5件テスト」で問題が見つかれば、CSVやpstファイルを修正して再度テストすれば済みます。本番で1000件インポートしてから気づくと、重複削除や手作業修正に何時間も奪われます。

今後のPC入替・異動に備える“自社標準”Outlookアドレス帳インポート手順書の作り方

毎回ゼロからやり方を検索していると、担当者が変わるたびに同じトラブルが再発します。総務・情シス視点では、「社内標準の手順書」を1枚作ってしまう方が結果的に工数が少なくなります。

最低限、次の項目を盛り込んだWordまたはPDFを作成し、共有フォルダーに保存しておくと安定します。

• 対象バージョンと画面の入り口

  • 例:「Outlook Microsoft 365（クラシック）」「ファイル」→「開く/エクスポート」→…

• データ形式と用途

  • PST: 旧PC→新PCの移行用
  • CSV: 他ソフト・Excelからの取り込み用

• バックアップ手順の章を、インポート手順より前に配置

• テストインポートの件数と確認項目

• 失敗時のロールバック手順（どのPST/CSVを再インポートするか、どのフォルダーを削除するか）

可能なら、手順書の最後に「チェックリスト」を付けておくと、PC入替や異動のたびに同じフローで確認できます。

• バックアップPSTの保存場所を記録したか

• CSVの件数とインポート後の件数が一致しているか

• 社外の連絡先を、誤って共有フォルダーに入れていないか

この3ステップをテンプレート化しておけば、「Outlookアドレス帳インポート」は単発の“作業”ではなく、再現性の高い“社内ルール”になります。

執筆者紹介

主要領域はOutlookを中心とした業務用ツールの実務解説です。日本のビジネス現場（総務・営業・情シス）で起きがちなトラブルを踏まえ、Microsoft公式情報と日本語UIの画面を突き合わせながら、バージョン差異・CSV/PST運用・権限やポリシーの観点を整理することを得意としています。本記事も、検索意図分析と競合調査に基づき、「失敗しないインポート手順」を実務目線で体系化しています。