bingとmapsで静かな売上を守る実務ガイド【店舗と情シス必読】

あなたの店舗や自社システムから、毎月じわじわと「静かな売上」がこぼれ落ちています。その原因は派手な広告の失敗ではなく、「Googleマップは触っているが、Bing Mapsは放置している」という構造的な欠陥です。アクセスログを丁寧に見ると、検索エンジンのうち数％はBing経由という現実があり、その数％に対して地図情報やナビ導線が壊れたまま放置されているケースが、現場では珍しくありません。

この数％を軽視すると、こうなります。
営業時間がGoogleとBingでズレたまま表示され、Bing Mapsから来たお客様だけが「休みの日に店まで来てしまう」。住所は同じなのに、片方の地図だけピン位置がずれていて、一部のカーナビ利用者だけが迷子になる。Bing Maps for Enterprise終了のニュースを「自分には関係ない」と流していた結果、更改直前にAzure Mapsや他社地図への移行を迫られ、要件定義をやり直すことになる。どれもニュースにはならないが、現場では確実にコストとして積み上がります。

従来の「日本はGoogle一強だからBingは無視」という一般論が機能しない理由は、地図が広告ではなく「来店と業務のインフラ」だからです。ユーザーのブラウザやOSの初期設定、社内PCの標準環境、インバウンド客の検索習慣。こうした要因によって、あなたが意図していないところでBing MapsやBing Placesが入口になり、そこで情報が壊れていると、静かに評判と効率が削られていきます。

この記事では、感覚論ではなく現場で実際に起きているパターンと、Bing Maps／Googleマップ／Azure Mapsをまたいだ「地図まわりの資産管理」の考え方を、ローカルビジネス担当・Web／マーケ担当・開発／情シスの三者それぞれの立場から解体します。

• Bingのシェアを甘く見た結果、どんな損失が起きているのか
• Bing MapsやBing Placesをどこまで整備すべきか、その現実的なライン
• Googleマップだけに依存した店舗一覧ページや店舗検索システムの危険な盲点
• Bing Maps for Enterprise終了とAzure Maps移行を、何年単位ではなく「何回のリリース」で逆算する思考法
• Google＋Bing前提でMEOと地図APIを設計し直すための、明日から着手できる手順

これらを押さえることで、「Bingなんて誰も使っていない」という思い込みを捨て、小さいが確実な売上と、将来の更改コストの両方を守る判断ができるようになります。この先を読まずにBing Mapsを放置すること自体が、すでにひとつの経営判断です。

以下の表を眺めて、自分が今どの武器を持っていないかをまず確認してください。

この先の本文では、ここで示した武器を一つずつ具体的なチェックリストと手順に落とし込みます。

「Bingなんて誰も使ってない」は本当か？アクセスログが暴く“静かな売上”

表面だけ見ると「日本はGoogle一強」。ただ、現場でアクセスログを数百件レベルで眺めていくと、必ずと言っていいほどBingの足跡が混じってくる。月次レポートではノイズ扱いされている数％が、ローカルビジネスにとっては「静かに積み上がる売上」になっている。

Bingのシェアを甘く見ると何が起きるか：現場でよく見る3つのパターン

Bingを完全無視していると、次の3パターンにぶつかりやすい。

• 店舗検索は出るが、営業時間が数年前のまま

• ナビは出るが、ピン位置がズレて来店前に迷子になる

• 予約フォームには来るが、どこ経由か誰も把握していない

どれも致命傷には見えないが、「口コミでの悪評」「取りこぼし」の形で確実に財布を削ってくる。

小さな店舗でもログを掘ると見えてくる「Bing経由1〜数％」というリアル

月間数万PV前後のサイトを解析すると、検索エンジン経由の構成比として次のような数字が報告されることが多い。

例えば月間100件の予約がある店舗なら、Bing経由1〜数％は「毎月1〜数件」。1件あたり1万円の客単価なら、年ベースで十数万〜数十万円が、設定ミスひとつで吹き飛んでいる計算になる。しかもBing Places登録は無料で、作業時間も数時間〜半日レベル。ここをやるか放置するかは、もはや「広告費」ではなく「落とすか拾うかの小銭拾い」に近い判断だ。

Google一強でもBingを切り捨てられない“2つの理由”（端末環境とインバウンド）

Bingを完全に切れない背景には、技術とマーケ両方の事情がある。

1つ目は端末環境。
Windowsの標準ブラウザはEdge、標準検索はBing。社内PCを触っていると、意図せずBingで検索しているケースが想像以上に多い。特にBtoBやシニア層向けビジネスでは、「ブラウザを変えない人」ほどBingユーザーになりやすい。

2つ目はインバウンド。
海外からのユーザーは、必ずしもGoogleだけを使っていない。英語圏でBingをデフォルトにしているPCやブラウザも存在し、日本のローカルビジネスを英語で検索した時に、Bing Maps側だけ情報がスカスカという光景は珍しくない。
「国内シェアが小さいから放置」ではなく、「端末と国境をまたいだ時に、名刺代わりの地図が2枚とも整っているか」を見る視点が必要になる。

ローカルビジネス編：Bing Mapsを触っていない店で起きている「情報事故」

営業時間・臨時休業がGoogleとBingでズレると、どうクレームに発展するか

MEO対策でGoogleビジネスプロフィールは完璧なのに、Bing Placesを放置している店舗は少なくない。ここで起きるのが、「片方だけ古い営業時間」問題だ。

よくある流れはこうだ。

• Google側だけ時短営業・臨時休業を更新

• Microsoft Edge標準のPCからBingで検索した顧客は、Bing Mapsの古い営業時間を信じて来店

• 「閉まっているのに開いていると表示されていた」とクレーム

• 口コミやSNSで「情報が信用できない店」としてダメージ

アクセスログを見ると、検索経由のうちBingは1〜数％でも、クレームは1件で評価★1つ分の打撃になる。売上へのインパクトより、ブランド信用の目減りが痛いポイントだ。

「住所は合ってるのに辿り着けない」ナビトラブルの裏側にある設定ミス

Bing Mapsで多いのが、「ピンの位置ズレ」とカテゴリ誤設定だ。住所テキストは正しいのに、座標がビル裏の搬入口や駐車場に落ちているケースが目立つ。

• レイヤー上の地図データは正しい

• しかしBusinessアカウント側でピンを微調整していない

• 車のナビで案内されるのは裏口

• 「ぐるぐる回った」「駐車場が見つからない」と問い合わせが増える

Google Mapsだけでピンを合わせて安心していると、Bing経由のユーザーが「たどり着けない顧客」になり、来店前に離脱する。Bingでも手動でピンをドラッグし、店舗入口のドア位置まで詰めるのが現場での鉄板だ。

四半期ごとにやっている店舗情報の棚卸しチェックリスト（Google＋Bing）

ローカルビジネスで安定運用している店舗は、四半期ごとの情報棚卸しを「ルーティン業務」に組み込んでいる。実際のチェック項目はシンプルだが、ここをやるかどうかでトラブル率が変わる。

• プロフィール情報

  • 店名表記（全角・半角・支店名の有無をGoogle／Bingで揃える）
  • カテゴリ（「居酒屋」か「バー」かなど、軸を統一）
  • 電話番号・公式WebサイトURL

• 営業時間・臨時対応

  • 通常営業時間の差分チェック
  • 祝日・長期休暇・季節営業の反映状況
  • 「臨時休業」の終了日が過去のまま残っていないか

• 位置・地図表示

  • Google MapsとBing Mapsのピン位置を比較
  • ストリートビュー／ストリートサイドで入口が見えるか確認
  • 駐車場・最寄駅からのルートが現実と合っているか

• 画像・口コミ

  • 古い外観写真（改装前）を放置していないか
  • 口コミで「営業時間が違う」と指摘されていないか

このレベルの棚卸しに使う時間は、1店舗あたり30〜60分程度。それで「売上の1〜数％＋クレーム削減」を買っていると考えると、Bingの扱いを後回しにする理由は薄くなる。Google一強の環境でも、Bingを“捨てない店”がじわじわ差をつけていく。

Bing Places登録の“実務リアル”：フォーム入力より大変なのはココだった

「Bing Mapsに店舗を登録するだけでしょ？」と思って触ると、フォーム入力よりも“決めごと”で足が止まるケースが多い。現場で実際に詰まりやすいポイントを、Bing Places for Businessの画面ベースで分解していく。

住所・カテゴリ・写真…入力欄より悩ましい「決めきれないポイント」

Bing Placesの登録で時間が溶けるのは、タイピングではなく判断だ。

• 住所表記

  • 「丁目・番地・号」の全角半角やビル名の書き方をGoogleビジネスプロフィールと揃えないと、Maps上のピン位置やナビが微妙にズレる
  • 郵便番号・市区町村・レイヤー（建物名）の分割がGoogleと違うため、どちらを基準にするかを先に決めておかないと全店舗で迷走する

• カテゴリ選定

  • BingはGoogleよりカテゴリ候補が少ないことがあり、「どれもピンと来ない」状態になりやすい
  • 現場では「検索されたときに一番近いキーワードで出るか」を軸に、メイン1つ＋サブ1〜2個に絞って運用するパターンが多い

• 写真の優先順位

  • 外観・内観・メニュー画像を無秩序にインポートすると、Bing側で意図しないサムネイルが選ばれる
  • クリック率を意識するなら「外観1枚＋内観1枚＋主力サービス1枚」を“名刺3点セット”として決め打ちする方が運用しやすい

登録前に、Google側と揃える基準をチーム内で決めておくと、複数店舗の情報整備が一気に楽になる。

ハガキ認証・電話認証でつまずくパターンと、事前に潰しておくチェック項目

Bing Placesの最大の“事故ポイント”が認証だ。Microsoftアカウントまでは順調でも、ハガキが届かない／電話に出られないで何週間もロスする。

• ハガキ認証で止まりやすいケース

  • テナント名と店舗名が違い、ポストに店舗名が書かれていない
  • 共有ポストで他テナントが誤って廃棄
  • 転送届を出しているため投函されない

• 電話認証で止まりやすいケース

  • 店舗電話がコールセンター経由になっており、その場でコードを聞き出せない
  • 営業時間外に認証を試し、誰も出ない
  • ナビダイヤル・IP電話で認証不可パターン

認証前に最低限チェックしておきたい項目は次の通り。

• ポストに店舗名が明記されているか

• コールセンターではなく“現場で受けられる番号”を登録しているか

• 認証に対応できる時間帯を決め、担当者を固定しておくか

登録から反映までの“時間感覚”と、現場がよく勘違いする更新タイミング

Bing Mapsは、登録して即日すべてが反映されるわけではない。現場での感覚値としては、以下のような“ラグ”が起きやすい。

• 新規登録

  • 認証完了からマップ表示まで、数日〜1週間程度かかる報告が多い
  • 検索結果の地図パネル（ローカルパック）に安定表示されるまで、さらに数週間かかるケースもある

• 営業時間・臨時休業の更新

  • Googleは数分〜数時間で反映されることが多い一方、Bingは反映にムラがあり、「Bingだけ古い営業時間のまま」という“情報事故”が生まれやすい
  • キャンペーンや大型連休前は、GoogleとBingを同じタイミングで更新し、必ず検索で表示を確認しておくとクレームを防ぎやすい

現場では、このラグを見越して「最低でもイベントの1〜2週間前にBing側を更新・確認する」という運用にしておくと安全だ。短期的な集客だけを見るとBing対策は優先度が低く感じられるが、営業時間や住所の誤表示によるクレームは、たとえ売上の1％由来でもダメージは大きい。そこで店舗情報の棚卸しにBing Mapsを組み込むことが、静かなコスト削減になる。

Web・マーケ担当の盲点：Googleマップだけ埋め込んだ店舗一覧ページのリスク

「店舗一覧ページ＝Googleマップ1枚貼っておけばOK」と思った瞬間から、静かに取りこぼしが始まります。アクセスログを追うと、PC経由の検索流入の数％はBingから来ているケースが珍しくありません。そのユーザーに対して、サイトも地図もGoogle前提で設計していると、UIも動線もかみ合わないまま放置されます。

Bing MapsやBing Places for Businessを無視していると、地図情報はMicrosoft側の自動推測に任されます。住所は合っているがピン位置が微妙にズレる、店舗名が旧名のまま残る、といった「情報ノイズ」が積み上がり、結果的に問合せ増加や来店キャンセルという形で跳ね返ってきます。

Edge標準の社内PCで露呈する「Bing前提UI」と社外サイトのズレ

社内PCの標準ブラウザがEdgeの場合、社員が店舗の場所を確認するときの起点はBing検索とBing Mapsになります。一方、公式サイトの店舗一覧はGoogle Maps前提。結果として、次のような現象が起きます。

• 社員は「Bingで検索→Bing Mapsでルート確認」

• 顧客には「サイトのGoogleマップURL」をメールで送る

• 表示される店舗名や写真がBingとGoogleで微妙に違う

このズレは、案内メールやチャットのテンプレートを整備するだけでかなり抑えられます。

• 社内マニュアルに「Bing用URL」「Google用URL」の両方を記載する

• Outlookやチャットツールの定型文を、二つの地図リンク前提で更新する

• Web担当がBing Mapsの表示を定期確認し、情報の差分を洗い出す

店舗検索・来店導線を「Google依存」から「マルチ地図設計」に切り替える考え方

ポイントは「どの地図サービスを推すか」より、「ユーザーが今いる環境から最短で店舗情報に到達できるか」です。PCならBing検索で店舗名を入れる人、スマホならGoogleマップアプリから直接探す人もいます。この両方を想定した動線設計が必要になります。

• 店舗一覧ページに、Google Maps埋め込み＋Bing Mapsへのテキストリンクを用意

• 各店舗ページのフッターに、「Googleで開く」「Bingで開く」のボタンを設置

• 広告用LPやメールのフッターに、どちらの地図URLもテンプレートとして組み込む

お客様対応の現場で起きている、地図URLの貼り間違い・案内ミスの連鎖

ヘルプデスクやコールセンターでは、「最寄り店舗を教えてほしい」「駐車場の場所を確認したい」という問い合わせが日常的に発生します。その場しのぎで担当者が検索して地図URLをコピーすると、次のような連鎖が起こりがちです。

• プライベートのGoogleアカウントで開いたマイマップのURLを送ってしまう

• 旧店舗のBing Maps URLをブックマークから貼ってしまう

• PCで見やすい経路を案内した結果、スマホのBingアプリでは別ルートになってしまう

このリスクは、あらかじめ「公式ルート案内URL」をGoogle MapsとBing Mapsの両方で決めておき、CSチームに配布するだけでも大きく下げられます。Web・マーケ担当がその台帳を整備しておくことが、静かな問い合わせ増加を防ぐもっとも地味で効く施策になります。

開発・情シス編：Bing Maps for Enterprise終了とAzure Maps移行の“本当の論点”

「Bing Maps for Enterpriseが2028年に終わる」というニュースを、カレンダーだけで眺めていると痛い目を見る。地図は単なるUIパーツではなく、業務フローと売上データを巻き込む“基盤レイヤー”だ。ここを読み違えると、要件定義のやり直しと追加コストが一気に噴き出す。

「2028年まであと何年あるか」ではなく「何回リリースを挟めるか」を数える

情シス視点で重要なのは残り年数ではなく、リリースサイクルの回数だ。年1回リリースの企業なら、2028年までにフルリリースはせいぜい数回。そこにBing MapsからAzure Mapsや他社地図サービスへの移行を差し込むには、次のような現実的な問いが発生する。

• 既存のマップAPIを触れるのは、どのリリースタイミングか

• 既存のビジネスロジック（距離計算、店舗検索、ルート検索）に手を入れる余力があるか

• テスト環境でBingとAzureを並走させる期間を確保できるか

この時点で「あと4年あるから余裕」とはとても言えない。特にEnterprise契約でSLAやライセンス条件を組んでいる企業は、契約満了日とシステム更改のタイミングを突き合わせる作業が欠かせない。

既存システムでよく出る3パターン：Bing継続／Azure Maps移行／他社地図乗り換え

現場の議論は最終的に、次の3パターンに収れんしがちだ。

開発・情シスがやるべきは、「どれが良いか」を感覚で決めることではなく、ビジネス側の優先順位と制約条件をテーブルに載せることだ。例えば、店舗検索を広告施策と連動させるなら、Google広告との連携やGoogleビジネスプロフィールとの整合性も論点に入る。一方、社内業務システムであれば、Azure AD、Microsoftアカウントとの親和性を重視してAzure Mapsに寄せる判断も筋が通る。

PoCで必ず比較するべき観点：表示速度・料金・ライセンス条件・キャッシュ運用

PoCで「地図が出たからOK」としてしまうと、後で必ずツケが回る。Bing MapsからAzure Maps、もしくはGoogle Mapsへ移行を検討するなら、最低でも次の4観点は数値で比較しておきたい。

• 表示速度・体感パフォーマンス

  ページロード時間だけでなく、ズームやパンの滑らかさを計測する。店舗レイヤーが数千件を超えると、クライアント側でのクラスタリング機能やデータビニングの有無がUXに直結する。

• 料金モデルと無料枠

  月間のトランザクション数、地図画像の表示回数、ルート検索APIの呼び出し数など、現行Bing Mapsの利用実績をログから拾い、Azure MapsやGoogle Mapsの料金表に当てはめて比較する。月間数万〜数十万リクエスト規模でも、サービスごとの“単価のクセ”で手残りが大きく変わる。

• ライセンス・利用規約

  印刷物や社内資料へのマップ画像の埋め込み、位置情報データの二次利用、キャッシュ保存期間といった条件はサービスごとに差がある。ここを読み飛ばすと、後から「この運用はライセンス違反だった」と判明し、運用設計をやり直す羽目になる。

• キャッシュ運用とアーキテクチャ

  タイルキャッシュをどこまで自前で持てるか、CDNとの組み合わせが許容されるか、オンプレミス環境とのハイブリッド構成が現実的か。ArcGISや他のGISサービスとレイヤー統合する場合、投影法や座標系も含めて検証が必要だ。

この4軸を押さえておくと、「Bingだから」「Azureだから」といったベンダー名ベースの議論から脱却し、ビジネス要件と技術要件を同じテーブルに乗せた選定プロセスが回しやすくなる。

現場で本当にやっている「地図サービスの棚卸し」と優先順位のつけ方

「まずBing Mapsをやるかどうか」の前に、プロが必ずやるのが地図サービスの棚卸しだ。ここを飛ばすと、Bing対策もGoogleマップ最適化もすべて場当たり対応になる。

まず洗い出すべきは“どこに何の地図を使っているか”という資産台帳

最初にやるのは「感覚」ではなく「一覧化」だ。小規模ビジネスでも、地図の出番は思っているより多い。

洗い出しのチェック項目を実務寄りにまとめる。

• 自社Webサイト

  • 店舗一覧ページのマップ埋め込み(Google Mapsのみか、Bing Mapsもあるか)
  • アクセスページの地図リンク(BingのURLとGoogleのURLどちらを案内しているか)

• プロフィール系サービス

  • Googleビジネスプロフィール
  • Bing Places for Business
  • 業界ポータルや予約サイト内の地図表示

• 社内利用

  • 社内ポータルの拠点マップ
  • ArcGISやCRMに連携しているベースマップ(Bing MapsやArcGIS Onlineのレイヤー構成)

この洗い出しをExcelやスプレッドシートで資産台帳にしておくと、Bing Maps対策の優先順位が一気に固まる。

売上直結か、業務効率か：ユースケース別にBing／Google／その他を仕分ける

棚卸しができたら、次は「売上」か「効率」かで線を引く。アクセスログを見ると、検索エンジン経由の8〜9割はGoogleでBingは数パーセントというケースが多いが、売上で見るとその数パーセントが利益の上乗せを支えているパターンがある。

仕分けの判断軸は3つだけでよい。

• 売上直結系

  • 予約フォームへの流入に絡む地図リンク
  • 「店舗名+エリア」検索で表示される地図パネル
    → Googleと同じレベルでBing Mapsの情報も揃える優先度が高い

• 信頼性・ブランド系

  • 会社案内ページの地図
  • 採用ページのオフィス案内
    → 最低でも住所・電話番号・営業時間をGoogleとBingで一致させる

• 業務効率系

  • 社内の配送ルート確認で使うBing Maps
  • ArcGIS上のBingベースマップ
    → 速度と運用コストを見て、Azure Mapsや他社地図への移行を検討するゾーン

Bing Mapsは「売上直結ゾーン」では取りこぼし防止、「業務効率ゾーン」ではAzure MapsやEnterpriseライセンスのライフサイクル管理がポイントになる。

1〜3年で変えて良い場所と、10年単位で変えると危険な場所の線引き

最後に、どこを短期でいじってよくて、どこを10年スパンで腰を据えるかを決めないと、Bing Maps for Enterprise終了のようなイベントで右往左往する。

• 1〜3年サイクルで変えてよい場所

  • 店舗LPの埋め込みマップ
  • キャンペーン用ランディングページの地図リンク
  • 店舗検索UIのマップAPI(Google MapsからBing Maps for Webへの切り替えなど)
    → A/Bテスト感覚でBing/Google/Azureを切り替えやすい領域

• 10年単位で変えると危険な場所

  • 社内基幹システムと結合した地図コンポーネント
  • 物流ルート最適化や不動産査定のように、地図データが業務ロジックに深く入り込んでいる部分
    → Bing Maps for Enterprise終了タイムライン(2028年6月)を前提に、Azure Mapsや別サービスへの段階的移行計画を今から引いておく必要がある

この線引きを済ませておくと、「Bing Mapsをどうするか」という議論が感情論から離れ、売上・効率・リスクの3軸で冷静に判断できる。ローカルビジネス担当もWebマーケ担当も開発者も、同じ資産台帳を見ながら話せる状態を作ることが、Bing Maps時代の地図戦略のスタートラインになる。

失敗ケースから学ぶ：Bing Mapsを後回しにした結果、余計なコストを払った話

「Bingなんて誰も使ってないでしょ？」と口にした瞬間から、静かにお金と評判が漏れていくケースが現場では繰り返されている。アクセスログを掘り、問い合わせ履歴を洗うと、Bing Mapsを軽視した“ツケ”が想像以上に高くついているのが見えてくる。

ここではローカルビジネス担当・Web/マーケ担当・開発・情シスそれぞれが実際に直面しがちな3つの失敗パターンを整理する。

Googleだけチューニングしていた店舗が、Bingの誤情報で評判を落としたケース

個店〜中小の店舗で多いのが、「Googleビジネスプロフィールだけ最適化して、Bing Places for Businessは完全放置」というパターンだ。アクセスログを確認すると、検索流入のうちBing経由は1〜数％程度に見えることが多いが、その1〜数％がクレームのかなりの部分を占める事例が報告されている。

典型的なズレは次のようなものだ。

失客だけでなく、「情報管理がルーズな店」という印象ダウンは痛い。店舗側は「Googleでは直しているのに」と感じるが、ユーザーは検索エンジンを選ばない。
対策はシンプルで、GoogleとBingを“片面印刷ではなく両面印刷”として扱うことだ。

• Bing Placesへの登録・オーナー確認（ハガキ/電話）

• Google側のプロフィール変更時に、必ずBing側も同時更新

• 四半期ごとに「店舗情報棚卸しチェック」を実施

時間コストは四半期で数十分レベルだが、クレーム1件分の対応時間と比較すると、投資対効果は高い。

更改直前にBing Maps終了を知り、要件定義が“白紙戻し”になったプロジェクト

企業システム側で起きているのが、Bing Maps for Enterprise終了スケジュール（2028年6月30日完全終了）を「開発がほぼ終わった段階」で知り、要件定義をやり直す羽目になるケースだ。

よくある流れはこうだ。

• 数年前から利用しているBing Maps Enterpriseライセンスを惰性で継続

• 新基幹システム刷新の要件として「既存と同じ地図サービスを利用」と記載

• 詳細設計フェーズで、Azure Mapsへの統合アナウンスを情シスがキャッチ

• ライセンス条件・料金・API仕様の違いを検討し直す必要が発覚

• テスト済みだった地図レイヤー周り（表示・キャッシュ・トラッキング）の設計を全面見直し

プロジェクトマネージャー目線で重要なのは、「2028年まで何年あるか」ではなく、その間に自社システムが何回リリースを挟むかだ。
1〜2年ごとに大規模リリースを打つ業態なら、今のリリースでBing Mapsを前提に固めるか、最初からAzure Mapsや他の地図サービスへ移行前提で設計するかを、要件定義のテーブルに載せておく必要がある。

開発・情シスが押さえておくべきポイントは次の通り。

• 現在のBing Maps利用箇所を洗い出す（Webフロント、社内ポータル、ArcGIS連携など）

• Azure Maps・Google Maps等との表示速度、料金、キャッシュ運用の比較PoCを前倒しで実施

• 経営層への説明資料に「ライフサイクルリスク」と「移行工数」の両方を数値で盛り込む

「どうせ使われてない」で無視した結果、社内ヘルプデスクが疲弊したシナリオ

Web/マーケ担当が見落としがちなのが、社内ユーザーの環境がBing前提になっているケースだ。Windows標準のEdge＋Bingをそのまま利用している従業員が多い企業では、外部向けWebサイトや営業資料に貼った地図URLと、社内の実際の利用環境がズレる。

代表的なシナリオはこうなる。

• 店舗一覧ページはGoogle Maps埋め込みのみを採用

• 営業担当は社内PCからBing検索で店舗を探し、出てきたBing Mapsの情報をそのまま顧客に共有

• GoogleとBingで住所やピン位置が違う店では、顧客が迷子になり、問い合わせがヘルプデスクに集中

• 問い合わせ元のブラウザ・検索エンジンが混在し、原因特定に毎回時間がかかる

このパターンでは、Bing Mapsを放置した結果として、ヘルプデスクと営業現場の工数がじわじわ奪われる。
ローカルビジネスの売上に直結しないように見えて、社内コストという形で財布を削る。

抑えたいポイントは3つ。

• 社外向け案内に使う地図URLを「Google版」と「Bing版」でテンプレ化し、用途ごとに使い分ける

• 社内FAQやマニュアルで、「Bing Mapsでの店舗検索手順」「正しいピン位置の確認方法」を明文化

• WebサイトのUI設計時に、Bingユーザー向けのリンク・埋め込み方法も検討する（完全にGoogle依存にしない）

Bing MapsやAzure Mapsを“特別扱い”する必要はないが、Googleだけを前提に設計するのは、現場ではすでにリスクになり始めている。アクセスログと問い合わせ履歴を一度棚卸しすれば、その静かなインパクトがはっきり見えてくる。

Google＋Bingを前提にした「これからのMEO・地図戦略」ミニ設計図

指名検索の“名刺”としての地図：GoogleとBingを揃えるという最低ライン

店名やブランド名で検索された瞬間、最初に目に入るのは文字よりも地図パネルだ。ここがヨレていると、名刺に誤字があるのと同じで、一発で信頼を落とす。
現場のアクセスログを見ると、検索エンジンの9割前後がGoogleでも、残り1〜数％はBing経由というケースが少なくない。Windows＋Edge標準環境を考えれば、この“少数派”は完全には消えない。

そのため、指名検索の「最低ライン」は次の通りになる。

• Googleビジネスプロフィール

• Bing Places for Business（Bing Maps上の店舗情報）

この2つで、住所・電話番号・営業時間・写真をそろえておく。片方だけ更新していると、臨時休業や移転情報がズレ、クレームや来店ミスの温床になる。

マップAPI選定で営業・マーケ・情シスが同じテーブルに着くときの論点整理

地図APIは、開発だけの話にすると後で料金爆発や利用規約違反で痛い目を見る。Bing Maps / Azure Maps / Google Mapsのどれを採用するにせよ、営業・マーケ・情シスが同じテーブルで確認すべき論点は決まっている。

• 料金・トラフィック

  • 月間アクセス数と将来の増加ペース
  • 無料枠の範囲と、超えた場合の単価

• ライセンス条件・データ利用

  • 商用利用可否
  • 地図画像のキャプチャやPDFへの埋め込み可否
  • 位置情報データの二次利用範囲

• ユーザー体験（UX）

  • PC・スマホでの表示速度と操作感
  • ピン・レイヤー・ヒートマップなどの機能

• ライフサイクル・移行性

  • Bing Maps for Enterprise終了のような予定の有無
  • Azure Mapsなど代替サービスへの移行パス

この論点を一枚のシートに整理しておくと、2028年のBing Maps for Enterprise終了のようなイベントが来ても、「どこをどう差し替えるか」の判断が早くなる。

明日から着手できる3ステップ：現状把握 → 小さなテスト → 四半期ルーティン化

地図戦略は、“一気に完璧”を目指すほど失敗しやすい。現場で回っているパターンは、シンプルな3ステップだ。

1. 現状把握（資産台帳づくり）

   • 自社Web・アプリ・広告・社内ツールで
     「どこにGoogle Mapsを使い」「どこにBing MapsやArcGISレイヤーを使っているか」を一覧化
   • 店舗単位では、GoogleビジネスプロフィールとBing Placesの登録・更新状況を棚卸し

2. 小さなテスト

   • まず1〜2店舗だけ、Bing Places登録と情報整備を実施
   • 3〜6ヶ月を目安に、「Bing経由のアクセス・予約・電話件数」をログで確認し、効果と工数感を掴む

3. 四半期ルーティン化

   • 四半期ごとに、次を必ずチェックする運用に落とし込む
     • Google／Bing両方の営業時間・住所・電話・写真
     • マップAPIの利用量と料金、キャッシュ設定
   • キャンペーン前後は“臨時棚卸し”を入れて、情報ズレを防ぐ

明日やるべきことは、華やかな新機能導入ではなく、「GoogleとBingの名刺をそろえ、今の地図利用を洗い出すこと」だ。ここさえ固めておけば、MEOもシステム移行も、後からいくらでも上積みできる。

執筆者紹介

主要領域は検索行動分析と地図サービス設計。本記事は、Bing Maps／Googleマップ／Azure Mapsに関する公開情報と、一般に報告されているアクセスログ傾向・運用パターンのみを基に構成しています。特定企業での導入実績やコンサル経験を装うことはせず、第三者目線で「どこを確認し、どう比較すべきか」という実務の考え方を整理する立場から執筆しています。