静かな夜や、水を使った直後に、壁や床下から「カンカン」「コンコン」といった金属音が聞こえてくることはありませんか？
「排水管から変な音がする」「どこか故障しているのではないか」と不安に感じる方も多いことでしょう。特に夜間に響く音は気になりますし、見えない場所でのトラブルは心配が尽きないものです。
実はこの「カンカン」という音、水回りにおける「SOSサイン」である可能性があります。
この記事では、排水管や水道管から異音が鳴る主な原因と、ご自身でできる対処法、そして業者へ相談すべきタイミングについて詳しく解説します。音の正体を知り、適切な対策を行うことで、安心して暮らせる環境を取り戻しましょう。
目次
「カンカン」という音の正体は？主な2つの原因
水回りで聞こえる「カンカン」「コンコン」という音には、大きく分けて2つの原因が考えられます。音が鳴るタイミングや状況によって、どちらの原因に近いかを見分けることができます。
1. ウォーターハンマー現象（水撃作用）
もっとも代表的な原因が「ウォーターハンマー現象」です。水道の蛇口を急に閉めたり、全自動洗濯機が給水を停止したりした瞬間に、水道管内の水流が急激に止まることで圧力が発生し、配管が振動して音が出る現象です。
特徴：
・水を止めた瞬間に「ガン！」「ドン！」と大きな衝撃音がする
・壁の中で配管が暴れているような音がする
・シングルレバーの蛇口や洗濯機、食洗機の使用時によく起こる
2. 配管の熱膨張・収縮
もう一つの原因は、温度変化による配管の膨張と収縮です。特にお湯を使った際に発生しやすい現象です。排水管（塩ビ管など）にお湯が流れると、熱で管が膨張し、配管を固定している金具や壁材と擦れ合って音が鳴ります。
特徴：
・お湯を使った時やその直後に「カンカン」「ピシッ」と音がする
・一定のリズムで連続して鳴ることがある
・冬場など、気温差が大きい時期に発生しやすい
以下の表で、それぞれの特徴を整理しました。ご自宅の状況と照らし合わせてみてください。
| 音の種類 | 発生タイミング | 主な原因 |
|---|---|---|
| 「ドン」「ガン」 （衝撃音） | 水を急に止めた時 洗濯機の給水停止時 | ウォーターハンマー （水圧の急激な変化） |
| 「カンカン」「ミシミシ」 （金属音・摩擦音） | お湯を流している時 お湯を止めた後 | 熱膨張・収縮 （配管と支持金具の摩擦） |
原因1：ウォーターハンマー現象のリスクと対策
もし音が「ウォーターハンマー現象」によるものであれば、早めの対策が推奨されます。
「たかが音だけ」と放置してしまうと、繰り返される衝撃によって配管の継ぎ目が緩み、水漏れを引き起こす恐れがあるためです。最悪の場合、漏水センサーの故障や給湯器の寿命を縮めることにもつながりかねません。
ご家庭でできる簡単な対策
ウォーターハンマー現象は、急激な水圧変化を抑えることで軽減できる場合があります。
- 蛇口をゆっくり閉める：
レバー式の蛇口は一気に閉めてしまいがちですが、意識してゆっくりと閉じることで衝撃を和らげることができます。 - 元栓（止水栓）を少し絞る：
水量自体を少し減らすことで、水圧の負荷を下げる方法です。ただし、シャワーの勢いが弱くなりすぎないよう調整が必要です。
水撃防止装置（水撃低減器）の設置
根本的な解決には、「水撃防止装置」の設置が効果的です。これは配管内の衝撃を吸収するクッションのような役割を果たします。
ハンドル式の蛇口や洗濯機の蛇口に取り付けるタイプであれば、ホームセンターなどで購入し、DIYで取り付けることも可能です。しかし、壁の中の配管に設置が必要な場合は、専門業者への依頼が必要です。
原因2：配管の熱膨張による音への対処法
「お湯を使うとカンカン鳴る」という場合は、配管の熱膨張が原因である可能性が高いでしょう。この場合、ウォーターハンマーほど緊急性は高くありませんが、音が気になって生活に支障が出る場合は対策が必要です。
この現象は、配管が膨張する際に、固定金具（支持バンド）や貫通部分の木材と接触・摩擦することで発生します。
対処のアプローチ
この音を止めるには、配管と接触部分の摩擦を解消する必要があります。具体的には以下のような作業が必要となります。
- 配管支持金具の調整：
配管を固定している金具の締め付けを緩めたり、滑りを良くする緩衝材を挟んだりします。 - 接触部分の隙間確保：
壁や床の貫通部分で配管が当たっている場合、穴を広げるなどの加工をして隙間を作ります。
これらの作業は、床下や壁裏、天井裏での作業となることが多く、一般の方がDIYで行うのは非常に困難です。無理に触ると配管を傷つけて水漏れの原因となることもあるため、専門知識を持ったプロに相談することをお勧めします。
自分で直せる？業者に依頼すべき判断基準
「費用を抑えたいから自分で直したい」と考えるのは自然なことです。しかし、水回りのトラブルには、自分で対応できる範囲と、プロに任せないと危険な範囲があります。
以下のチェックリストを参考に、業者への依頼を検討してください。
すぐに業者へ相談すべきケース
- 壁の中や床下から大きな音が聞こえる：
配管が隠蔽されている場所でのトラブルは、壁や床を剥がすなどの工事が必要になる場合があります。 - 水漏れの形跡がある：
クロスのシミ、床の浮き、カビの臭いなどがする場合、すでに配管が損傷している可能性があります。早急な対応が必要です。 - DIYで対策しても音が止まらない：
市販の防止器具をつけても改善しない場合、原因が別にあるか、配管全体のバランス調整が必要です。 - 築年数が古い建物：
配管自体の老朽化が進んでいる場合、錆（サビ）による詰まりや腐食が原因で異音が発生していることもあります。全体の点検をお勧めします。
業者選びに迷う場合は、複数の業者に見積もりを依頼し、対応の丁寧さや説明の分かりやすさを比較すると安心です。地元の信頼できる水道修理業者であれば、地域の水圧事情などにも詳しく、適切な提案をしてくれるはずです。
トラブルを未然に防ぐための予防策
排水管や給水管のトラブルは、日頃のちょっとした心がけでリスクを減らすことができます。
1. 蛇口は「優しく」扱う
シングルレバーの普及により、片手で素早く水を止められるようになりましたが、これが配管への負担となっています。「ゆっくり閉める」を習慣にするだけで、配管の寿命を延ばすことにつながります。
2. 定期的なメンテナンス
排水管の汚れが蓄積すると、水の流れが悪くなり、異音の原因になることがあります。定期的にパイプクリーナーで洗浄を行ったり、数年に一度はプロによる高圧洗浄を依頼したりすることで、健康な状態を保つことができます。
まとめ：不安な音は専門家に相談して安心を
排水管や壁の奥から聞こえる「カンカン」という音について、原因と対処法をご紹介しました。
音の原因は主に「ウォーターハンマー」か「熱膨張」のいずれかであり、それぞれ適切な対処法が異なります。ご自身で蛇口の閉め方を工夫するだけで改善することもありますが、壁の中の配管や経年劣化が関わる場合は、無理をせず専門家の力を借りることが解決への近道です。
毎日使う水回りだからこそ、異音というサインを見逃さず、早めに対処することで快適な暮らしを守りましょう。「もしかして故障かな？」と不安なまま過ごすよりも、一度点検を依頼して、原因をはっきりさせるだけでも大きな安心感が得られるはずです。
