健康診断のバリウム検査後、トイレで水を流しても「白い塊が残って流れない」「水の流れが悪くて詰まりそう」といったトラブルに見舞われていませんか？
バリウムは通常の排泄物とは性質が大きく異なるため、一度の洗浄では流れ切らないことが多々あります。しかし、焦って何度もレバーを回したり、熱湯をかけたりするのは大変危険です。最悪の場合、便器の破損や汚水があふれ出す事態になりかねません。
この記事では、バリウムが流れない原因を分かりやすく解説し、自宅にあるもので実践できる安全な解消法から、プロに依頼すべき判断基準までを段階的にご紹介します。焦らず、手順に沿って対処していきましょう。
目次
なぜバリウムはトイレに残りやすいのか？その原因
そもそも、なぜバリウムはこれほどまでに流れにくいのでしょうか。その理由は、バリウムの「重さ」と「固まりやすさ」にあります。
バリウム（硫酸バリウム）は金属の一種であり、水よりも比重が非常に重い物質です。さらに、時間の経過とともにセメントのように硬化する性質を持っています。近年の住宅で主流となっている「節水型トイレ」は、少ない水で効率よく流すように設計されていますが、バリウムのような重くて固い物質を押し流すパワーは想定されていません。
その結果、便器の底（S字トラップ部分）に沈殿して動かなくなったり、配管の途中で張り付いてしまったりすることで、「流れない」というトラブルが発生します。
【実践編】バリウムが流れない時の対処法ステップ
もしバリウムが流れずに残ってしまった場合、力任せに流そうとするのは逆効果です。状況に合わせて、以下の方法を順番に試してみてください。
1. ぬるま湯で柔らかくして流す
バリウムが便器の底に張り付いている場合、ぬるま湯を使ってふやかす方法が効果的です。バリウムは温めると柔らかくなりやすい性質があります。
- 準備するもの：40℃〜50℃程度のぬるま湯（バケツ1杯分）
- 手順：
- 便器内の水位が高い場合は、灯油ポンプや紙コップなどで水を汲み出し、減らしておきます。
- 少し高い位置から、排水口（水が溜まっている部分）に向けてゆっくりとぬるま湯を注ぎます。
- 30分〜1時間ほど放置します。
- その後、バケツで少しずつ水を流し、スムーズに流れるか確認します。
注意：絶対に「熱湯」を使用しないでください。陶器製の便器は急激な温度変化に弱く、熱湯をかけるとひび割れて水漏れの原因となります。
2. 割り箸で砕いて物理的に崩す
目に見える位置に白い塊が残っている場合は、物理的に小さく砕くことで流れやすくなります。
- 準備するもの：割り箸、ゴム手袋、ゴミ袋
- 手順：
- ゴム手袋を着用します。
- 割り箸を使って、便器の底にあるバリウムの塊を突いて崩します。
- できるだけ細かく砕くことで、水の勢いで流れやすくなります。
- 使用した割り箸はトイレに流さず、ゴミ袋に入れて処分してください。
3. ラバーカップ（スッポン）を使用する
すでに水が流れず、詰まりの症状が出ている場合は、ラバーカップ（スッポン）を使用します。圧力の変化を利用して、詰まりの原因を動かします。
- 準備するもの：ラバーカップ、床を養生する新聞紙やビニールシート
- 手順：
- 周囲に水が飛び散らないよう、床を養生します。
- ラバーカップを排水口に密着させます。
- ゆっくりと押し込み、勢いよく「引く」動作を繰り返します（引く時に詰まりが解消されます）。
- ゴボゴボという音がして水位が下がれば、詰まりが解消されたサインです。
事態を悪化させる！絶対にやってはいけないNG行動
焦るあまり、以下のような行動をとってしまうと、トラブルが深刻化する恐れがあります。これらは避けるようにしてください。
| NG行動 | 理由とリスク |
|---|---|
| 連続して水を流す | 詰まっている状態でタンクの水を流すと、便器から汚水があふれ出す危険があります。水が引かないうちは、レバーを回さないでください。 |
| 熱湯をかける | 前述の通り、陶器が割れるリスクがあります。必ず50℃以下のぬるま湯を使用しましょう。 |
| 酸性・アルカリ性洗剤を混ぜる | 「溶けるかも」と期待して強力な洗剤を使いたくなりますが、バリウム（硫酸バリウム）は化学的に安定しており、家庭用洗剤ではほとんど溶けません。むやみに薬剤を混ぜると有毒ガス発生の危険があります。 |
自分で対処できない場合は？業者依頼の判断基準
上記の方法を試しても改善しない場合や、状況が悪化しているように感じる場合は、無理をせず専門業者に相談することをお勧めします。特にバリウムは時間が経つほど硬化し、配管の奥で詰まると大掛かりな工事が必要になることもあります。
こんな時はプロに相談しましょう
- ぬるま湯やラバーカップを試しても水位が下がらない場合
- 水を流すと便器のフチまで水位が上がってくる場合
- 床と便器の隙間から水が漏れ出ている場合
- 自分での作業に不安がある、または体力的に難しい場合
水道修理業者は高圧洗浄機や専用のトーラー（ワイヤー器具）を使用し、固まったバリウムを確実に取り除くことができます。早めの相談が、結果的に修理費用を抑えることにも繋がります。
次回の検査時は要注意！バリウム詰まりの予防策
辛い詰まりトラブルを繰り返さないために、次回の健康診断後には以下の予防策を意識してみてください。
1. こまめに水を流す
「大」のレバーで一度に流そうとせず、排便中にもこまめに水を流すのが効果的です。タンクの水が溜まるのを待つのが面倒な場合は、あらかじめバケツに水を用意しておき、流す補助として使うのも良いでしょう。
2. トイレットペーパーを先に敷く
排便前にトイレットペーパーを便器の中に敷いておくと、バリウムが直接便器に張り付くのを防ぐことができます。
3. 指定された下剤と水分をしっかり摂る
体内でバリウムが固まる前に出し切ることが重要です。病院で処方された下剤を指示通りに服用し、普段以上に多めの水分を摂取して、バリウムが柔らかい状態で排泄されるように促しましょう。
まとめ
バリウムが流れないトラブルは、多くのご家庭で発生する「よくある悩み」の一つです。重くて固まりやすいというバリウムの性質上、通常の排泄物と同じようには流れないことがありますが、慌てる必要はありません。
まずは「ぬるま湯」でふやかし、必要に応じて「物理的に崩す」あるいは「ラバーカップ」を使用することで、多くの場合は解消可能です。ただし、無理は禁物です。自分では難しいと感じたら、被害が広がる前に専門の業者へ相談することが最も安全な解決策です。
正しい対処法を知っておくことで、健康診断後の不安を少しでも減らし、快適な生活環境を守りましょう。
