Outlookのアドレス帳をエクスポート失敗しない実務手順と事故防止ガイド

Outlookのアドレス帳エクスポートで本当に怖いのは、「できなかったこと」ではなく、「できたつもりで抜けや壊れが混ざること」です。PC入替や退職者の引き継ぎ、GmailやSaaS連携の当日に、それが判明するとやり直しはほぼ業務時間の奪取になります。この記事を読み切れば、同じ作業をしても「一発本番で事故る人」と「短時間で安全に終わらせる人」の差がどこで生まれるかが、具体的な手順レベルでわかります。

多くの人は、Microsoft公式ヘルプや一般的な解説を見ながら、そのままCSVやPSTを出力します。ところが現場では、次のような事故が頻発しています。

• GmailやSaaSに取り込んだ途端、日本語の氏名や会社名が文字化けする
• Outlook上では数百件ある連絡先が、エクスポートファイルでは一部しか入っていない
• 退職者のPSTをそのままインポートして、部署全員のアドレス帳が重複だらけになる

これらは「操作ミス」ではなく、ほとんどが準備不足と判断軸の欠如から起きています。どの目的で、どの形式（CSVかPSTか）を選び、どのフォルダを対象にし、どの順番でテストするか。この設計を誤ると、どれだけ丁寧にボタンを押しても結果は歪みます。

この記事は、Outlookのバージョン差や新旧UIの違いを踏まえつつ、次の3点に徹底的にこだわっています。

• 「自分はどのパターンか」を30秒で切り分けるフローチャートと、CSV/PSTを選ぶための具体的な3つの質問
• 実際に現場で起きた事故パターン（文字化け・一部欠落・重複登録）と、その回避ロジックを手順に組み込む方法
• 今日だけで終わらせないための、退職者対応・定期バックアップ・フォルダ運用ルールまで含めた「事故らない運用設計」

読み進めると、次のような状態に到達できます。

• Outlookの画面を一目見て、「新Outlook」「クラシックOutlook」「Outlook.com」のどれかを即判定できる
• Gmailや各種SaaSに連携する場合に、どんな文字コードと項目マッピングを確認すべきかがわかる
• 退職者や異動者のアドレス帳を、会社の資産としてどこまで・どうやって引き継ぐかの現実的な線引きが見える

この記事全体のロードマップは次の通りです。

Outlookのアドレス帳エクスポートは、一度失敗すると信頼と時間をまとめて失います。逆に、この記事の流れで設計しておけば、次回以降のPC入替やツール連携は、短時間で淡々とこなせる定型作業に変わります。今まさに作業直前であればあるほど、最初の数分をこの記事に投資してください。その数分が、後の数時間分のやり直しとクレームを丸ごと消します。

いきなり手順を見ると失敗する：まず「自分はどのパターンか」を30秒で切り分ける

アウトルックのアドレス帳エクスポートは、「闇雲に手順どおりやる」と高確率で事故ります。最初の30秒で自分のパターンを切り分けておくと、その後の作業時間とストレスが桁違いに変わります。

目的別フローチャート：PC入替・Gmail連携・退職者引き継ぎ…どれに当てはまる？

まずは「何のために出すのか」をはっきりさせます。目的がぶれると、CSVとPSTを行ったり来たりする羽目になります。

• PC入替・新しいOutlookにそのまま移したい

  → PSTエクスポート優先候補

• 退職者・異動者のOutlookを後任に引き継ぎたい

  → PST＋一時フォルダ運用が前提

• GmailやGoogle Workspaceに連絡先を移したい

  → CSVエクスポート一択

• 名刺管理やSaaS、マーケツールに顧客リストを取り込みたい

  → CSVエクスポート＋項目マッピング確認

• とにかくバックアップを取り、PC故障リスクに備えたい

  → 「連絡先だけならCSV」「メールも予定も含めてならPST」

ここで1つだけ選び切ると、その後の迷いがほぼ消えます。

CSVかPSTか迷ったときに見る「3つの質問」

迷ったときは、次の3問に答えてください。現場では、この3問で方向性を決めています。

ざっくり言えば、「Outlook同士で丸ごと」ならPST、「別サービスに連絡先だけ」ならCSVです。トラブルの多くは、ここをあいまいにしたまま作業を始めているケースです。

「新Outlook」「クラシックOutlook」「Outlook.com」見分け方チェックリスト

Microsoft公式ヘルプを読んでいて「自分の画面と違う」と感じたことがあるはずです。その原因の多くが、この3種類のOutlookの混在です。まず自分の環境を5秒で判定しましょう。

チェックの順番は次の通りです。

1. ブラウザで動いているか
   → はい：Outlook.com
   → いいえ：デスクトップ版

2. デスクトップ版の右上に「新しいOutlook」切り替えスイッチがあるか
   → ある：クラシックOutlook（旧UI）
   → ない：新Outlook

この3つを最初に切り分けておけば、以降どの手順を読めばいいかで迷うことはほぼなくなります。エクスポート作業の成功率は、この「最初の30秒」で決まると言っていいレベルです。

現場で本当に起きているアウトルック「アドレス帳エクスポート事故」3選

Outlookの連絡先エクスポートは、操作自体は数クリックで終わるのに、事故ると信用と時間をごっそり持っていく作業だ。現場で頻発しているパターンを3つに絞ると、次の表の通りになる。

文字化け・一部欠落・重複登録…よくある事故と“原因の共通項”

3つに共通するのは「エクスポート前の確認ゼロ」だ。
CSVファイルを作成する時点でエンコードを意識せず、Excelで開いて上書き保存。その状態で他サービスへインポートすると、日本語が崩れる。
また、「連絡先」フォルダーだけを見て安心し、実は「People」配下の別フォルダーにあるアドレスを取りこぼすケースも多い。重複は、Microsoftのインポート画面でオプションを読み飛ばし、「既存の連絡先を置換」「重複を許可」に気付かずクリックしてしまう構造的なミスだ。

退職者PSTをそのままインポートして部署全員が困ったケース

退職者のメールボックスをpstでエクスポートし、そのまま後任のOutlook既定プロファイルへインポート。結果として、後任が元々持っていた顧客と退職者の顧客が1つの連絡先フォルダーに混在し、「どれが誰の顧客か」判別不能になったケースは珍しくない。
本来は、インポート先に「退職者_連絡先」用の一時フォルダーを作成し、まずそこにだけ流し込むべきだ。その上で、必要な連絡先だけを選択してドラッグする運用なら、会社資産と私物の線引きもしやすい。

「当日一発本番」でやり直し地獄にハマるパターンと、その回避手順

PC入れ替え当日に、いきなり全件エクスポート→インポートを本番実施し、文字化けやフィールドずれに気付き、何度もやり直す相談も多い。
避けるコツはシンプルで、3件だけをテスト用に出す習慣だ。

1. 代表的な連絡先を3件だけ含むフォルダーを作成
2. そのフォルダーだけCSVまたはpstでエクスポート
3. 新PCやGmailなど移行先へインポートし、表示・項目・件数を確認

この3ステップを「本番の前日」に回しておくだけで、当日の作業は“作業”になり、トラブルシューティングから解放される。

CSVエクスポートの正解：他サービス連携を前提にした「事故らない」手順

Outlookの連絡先をCSVで出す作業は、見た目はワンクリックでも、中身は「爆発物処理」に近い仕事だと感じている人は多い。文字化け、フィールドずれ、重複登録。どれも起きてから直そうとすると、PC入替や日程が一気に押し込まれる。ここでは、GmailやSaaSへのインポートを前提に、現場で事故を潰してきた手順だけを絞り込んでまとめる。

OutlookからCSVを出すときに必ず確認したい文字コードと列の中身

OutlookからCSVファイルをエクスポートするとき、プロが最初に見るのは「どの連絡先フォルダーを」「どの文字コードで」出すかの2点だけだ。

1. フォルダーを絞る

   1. People画面を表示
   2. 本当に使う連絡先フォルダーだけを確認（私用フォルダーは除外）

2. エクスポート時に気にすべきポイント

   確認項目	具体的に見るポイント
   ファイルの種類	CSV（コンマ区切り）を選択
   文字コード	可能な場合はUTF-8を選択し、インポート先の仕様と一致させる
   列（フィールド）	氏名、会社名、メール、電話が揃っているかをExcelでざっと確認

特に日本語環境では、UTF-8以外のエンコードで出したCSVを、そのままGmailやSaaSに読み込むと、氏名や会社名が文字化けしやすい。Microsoft公式もCSVの文字コードに何度も触れており、ここがつまずきポイントであることは明らかだ。

Gmail・SaaSにインポートするときの「フィールドずれ」を防ぐ小さな工夫

CSVインポートの事故原因の多くは、「列の意味が移行先と噛み合っていない」ことにある。顧客名が「メモ」列に入ったり、会社名が空になったりするのは、Excelでの事前チェックでほぼ防げる。

おすすめは、次の流れだ。

• エクスポート直後にCSVをExcelで開く

• 1行目の見出しと、中身のサンプル2〜3行だけを確認

• 不要な列はそのままでもよいが、「姓」「名」「メールアドレス」「会社名」だけは必ず値が入っているかを見る

インポート先サービスの画面で「項目を手動で対応付け（マッピング）」する場面がある場合、次のシンプルな対応表を頭に置いておくと迷いにくい。

現場で多いのは、「姓」と「名」が逆転した状態でインポートされるケースだ。事前にExcelで列名を一時的にわかりやすくリネームしておくと、インポート画面での対応付けが格段に楽になる。

まずは3件だけ：テストエクスポート→テストインポートの具体ステップ

大量データをいきなり本番インポートして、文字化けやフィールドずれに気づくと、その日の作業が止まる。サポート現場で共有されている定番ワザは「3件テスト」で、作業時間は数分だが、事故の確率を一気に下げられる。

1. Outlook側でテスト用の連絡先3件を新規作成
   • 会社名・漢字氏名・カタカナ・電話・メールをバランスよく入力
2. その3件だけを含むテスト用フォルダーを作成し、CSVエクスポート
3. CSVをExcelで開き、上記の列と文字化けを確認
4. 移行先（GmailやSaaS）のアカウントで、「テスト用」と分かるグループにインポート
5. 表示名、会社名、メールアドレスがすべて正しく表示されているか確認
6. 問題なければ、同じ設定で本番フォルダーをエクスポート→インポート

この「3件テスト」を挟むだけで、当日一発本番のやり直し地獄からほぼ解放される。PC入替や退職者対応のタイトな日程ほど、数分のテストが全体の保険になる。

PSTエクスポートの正解：Outlook同士で丸ごと移すときの「線引き」とコツ

「今のOutlookを、そっくりそのまま新しいPCに持って行きたい」――この欲張りな願いを叶えられるのがPSTエクスポートだが、やり方を間違えると「重複だらけの連絡先地獄」になる。ここでは、現場で失敗を潰してきた視点から、PSTの正しい使いどころを整理する。

メールも予定も連絡先も全部持っていきたいときにPSTを選ぶ理由

PSTはOutlook用の引っ越しダンボール。メール、連絡先、カレンダー（日程）、タスクといった情報を1ファイルにまとめてアーカイブできる。

PC入替やアカウント切替で「今と同じOutlook画面」を再現したいなら、PST一択と考えた方が作業はシンプルになる。逆に、顧客データをSaaSやExcelで加工したい場合はCSVを選ぶ、という線引きが現場では定番だ。

退職者・異動者のアドレス帳をPSTで引き継ぐときの“一時フォルダ戦略”

退職者のアカウントからアドレス帳を引き継ぐ場面で多いのが、「個人の友人まで会社の共有アドレス帳に入ってしまう」問題だ。それを避ける現場ワザが一時フォルダ戦略。

1. 退職者側Outlookで、連絡先配下に「業務用_引継ぎ用」フォルダーを作成
2. 本人に、会社に残すべき連絡先だけをそのフォルダーへ移動してもらう
3. そのフォルダーを含むようにPSTをエクスポート
4. 後任側Outlookでは、PSTを開き、このフォルダーだけを自分の連絡先へコピー

この流れにするだけで、「どこまでが会社資産か」という線引きと、情報漏洩リスクの両方をコントロールしやすくなる。

重複連絡先を量産しないためのインポート設定チェックポイント

PSTインポート時の数クリックの違いが、後のメンテナンスコストを大きく分ける。最低限押さえたいのは次の3点だ。

• 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「Outlookデータファイルをインポート/エクスポート」を選択

• 「既存のフォルダーにインポート」ではなく、まずは一時的な「受け皿フォルダー」を指定

• インポートオプションで

  • 「重複するアイテムはインポートしない」か
  • 「重複するアイテムをインポートし、重複を許可する」
    のどちらを選ぶかを、事前にルール化しておく

プロは、いきなり「連絡先」本体に流し込まず、一時フォルダーに読み込んでからExcelで一覧確認する。これだけで、「同じ取引先が3件ずつあるOutlook」を量産する事故がほぼ防げる。

Microsoft公式ヘルプの「ここで迷う」を埋める、プロ視点の補足解説

公式ドキュメントが正しくても、現場ユーザーが詰まる3つの盲点

Microsoft公式の手順は仕様的には正確です。ただ、毎日Outlookを使う営業や総務の目線で見ると「ここで指が止まる」ポイントが3つあります。

1. どのメニューから入る話なのかが直感的でない
   「ファイル」タブなのか、「People表示」からなのか、説明を読む前に迷う。

2. 自分のケースがCSV向きかPST向きか書いていない
   「インポート/エクスポート」とだけ書かれており、PC入替・Gmail連携・退職者データ引き継ぎをどう切り分けるかが不明瞭。

3. 文字コードとエンコードの説明が“日本語の文字化け”と直結して見えない
   UTF-8やコンマ区切りと書かれていても、「これを間違えると顧客名が記号だらけになる」という危機感までは伝わらない。

現場で事故が起きるのは、仕様ではなく判断材料の不足が原因になっているケースが多いです。

「どの手順を見ればいいか分からない」を潰す、画面からの自己判定方法

公式ヘルプに入る前に、まずは自分のOutlook環境を30秒で仕分けします。画面を見れば、かなりの確率で絞り込めます。

この判定があいまいなままMicrosoftの手順を読むと、「同じメニューが見つからない」ストレスで作業が止まります。
逆に、上の表で自分のパターンを決めてからヘルプを開けば、「どのスクリーンショットが自分の画面に近いか」が瞬時に分かり、迷子になりません。

公式手順に1行付け足したい「エクスポート前後の安全確認」

公式ヘルプは「クリックの順番」は詳しい一方で、「本当にこのファイルで大丈夫か」を確かめるステップが抜けがちです。現場で事故を見てきた立場から、以下の3行を必須の追記としておすすめします。

1. エクスポート前：対象フォルダーを声に出して確認する
   「今からエクスポートするのは“連絡先 – 営業共通”フォルダー」と自分に読み上げるくらいでちょうどいいレベルです。誤って個人用フォルダーを出してしまうヒューマンエラーをかなり減らせます。

2. エクスポート直後：ファイルを開いて件数をざっくり見る
   CSVならExcelで、PSTならファイルサイズで「それらしいボリュームか」をチェックします。Outlook上の連絡先件数と比べて明らかに少ない場合、「一部のフォルダーしか選択していなかった」事故をその場で検知できます。

3. 本番利用前：3件だけテストインポートする
   GmailやSaaSへのインポートでは、いきなり全件を投入せず、テスト用のアカウントや一時フォルダーに3件だけ入れてみます。ここで日本語の会社名や氏名が正しく表示されていれば、UTF-8エンコードやフィールドのずれはほぼクリアです。

この3行を手順の最後に足すだけで、「ファイルは作ったが中身がスカスカ」「インポートしたら連絡先が文字化け」という典型的なトラブルの大半を、事前検査でふるい落とせます。
手順書はそのままでも、実務では“確認のためのワンクッション”を必ず挟む。これがプロ現場での暗黙ルールです。

LINE/メール相談を再現：「この場合どっちですか？」へのプロの返信

ケース1：営業担当からの相談「新しいノートPCに今日中に移したいんですが…」

営業Sさん
「Outlookのアドレス帳を新しいノートPCに“今日中”に移したいです。メールも予定も全部使えないと明日の訪問リストが飛びます。CSVとpst、どっちでエクスポートすれば安全ですか？」

このパターンは迷わずpstファイル一択です。理由はシンプルで、営業にとって必要なのは「メール・連絡先・日程（カレンダー）」の丸ごと引っ越しだからです。

ポイントは3つだけ押さえます。

• 旧PCのOutlookで

  「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」→「Outlookデータファイル（.pst）にエクスポート」をクリック

• フォルダーは「アカウントの一番上の行」を選択し、「サブフォルダーを含む」に必ずチェック

• 保存先はUSBではなく、まずはローカルディスクに保存してからUSBへコピー

  （直接USBに保存すると取り外しタイミング次第でデータ破損リスクが上がる）

新PC側では、一気に既存フォルダーへインポートしないのがプロのやり方です。まずは「一時フォルダー」を作り、そこへpstを読み込み、メールと連絡先が想定どおりか確認してから本番移行します。

ケース2：総務担当からの相談「退職者のアドレス帳、どこまで会社で持っていいのか」

総務Kさん
「退職者のOutlook連絡先を引き継ぎたいのですが、個人の友人も入っていそうです。どこまでエクスポートして良いんでしょう？」

ここは技術の前にルールです。よく現場で取られている線引きは次の通りです。

• 業務で取得した顧客・取引先の連絡先 → 会社資産としてエクスポート対象

• 明らかに私的な連絡先（家族、友人、プライベートメール） → エクスポート対象外

作業としては、退職者に画面を見てもらいながら、

1. 業務用フォルダー（例：「顧客」「取引先」）を一緒に確認
2. そのフォルダーだけを連絡先フォルダー単位でpstにエクスポート
3. 引き継ぎ先Outlookでは「退職者アドレス帳」というPeople用フォルダーを作成し、そこへインポート

この「一時フォルダー戦略」を取ると、後から「消すべき私的連絡先」が紛れ込んでいないか、人事・上長と一緒に確認しやすくなります。

技術的には5分で終わる作業ですが、事前の合意形成とフォルダー選択を怠ると、あとで情報管理の火種になります。

ケース3：マーケ担当からの相談「Outlookの顧客リストをSaaSに入れたいけど項目が合いません」

マーケ担当Mさん
「Outlookの連絡先をCSVで出して、SaaSにインポートしようとしたら、姓・名・会社名の列がうまく一致しません。Excelで編集していたら日本語が文字化けしてしまって…」

ここは文字コードとフィールドマッピングの二重トラップです。

まず押さえるべきはこの順番です。

1. Outlookで「CSV（コンマ区切り）」をエクスポート
   エンコード指定がある場合はUTF-8を選択
2. すぐに本番編集しないで、テキストエディターで文字化けしていないか確認
3. SaaS側の「インポート用テンプレートCSV」をダウンロードし、列名と順番を確認
4. そのテンプレートに合わせて、Outlook CSVから必要な列だけコピー＆ペースト

このとき、Excelで開く前に必ずバックアップ用の元CSVをコピーで保存しておきます。元ファイルを上書きしてしまうと、コンマや先頭ゼロが自動変換され、SaaSのフィールドと一致しなくなるケースが頻発します。

マーケの現場で多いのは、「一発本番で1万件インポート」してしまい、重複や項目ずれを後から手作業で直すパターンです。必ず3〜5件だけのテストCSVを作成し、SaaS側で「名前の表示」「メールアドレス」「会社名」が狙い通りに入るかを確認してから本番データを流し込むと、やり直し地獄を避けられます。

事故の9割は「準備不足」：エクスポート前5分でできるチェックリスト

Outlookのアドレス帳エクスポートは、作業前5分の準備で“ほぼノーリスク”にできるかどうかが決まります。
いきなり[エクスポート]ボタンをクリックする前に、ここだけは押さえておきましょう。

どのフォルダの連絡先を出すのか「地図」を先につくる

Outlookの連絡先は、1つのフォルダーにまとまっているとは限りません。Peopleビューで見ると1つに見えても、実際は複数フォルダーが裏で動いているケースがよくあります。

まずは、どのフォルダーからデータを出すかを“地図化”します。

1. Outlookを開き、[連絡先] / [People] を表示
2. 左側のナビゲーションで、連絡先フォルダーをすべて確認
3. 下の表のどれに当たるかを書き出す（紙でもExcelでもOK）

この「どこから出すか」を決めずにCSVやPSTを作成すると、

• 必要な連絡先が一部欠落する

• 古いアドレスまでインポートされて重複だらけになる

といった事故につながります。

個人連絡先と会社資産をどう線引きするか、現場で使われている基準

退職者のアドレス帳引き継ぎや、BYOD環境では個人情報と会社資産の線引きが必ず問題になります。情シスや総務が現場でよく使う基準を整理すると、次の通りです。

準備の段階で、

• 「業務用フォルダー」と「私用フォルダー」を分ける

• 退職時は「業務用フォルダーだけPSTにエクスポートする」とルール化

しておくと、あとから「これは会社が持っていいのか？」という議論で止まらなくなりません。

USB・クラウド保存で情報漏洩を防ぐための最低限ルール

Outlookの連絡先ファイルは、顧客リストそのものです。CSVでもPSTでも、保存した瞬間から「持ち出しリスク」を抱えることになります。保存先ごとの最低限ルールをまとめます。

上長や情シスと取り決める際は、次もセットで確認しておくと安心です。

• CSVファイルをExcelで開く前に、保存場所とファイル名をメモしておく

• 作業完了後、「テストインポートで問題なし」を確認したら、不要なコピーを削除する

• 顧客情報を含むファイルを個人PCに長期保存しない

この5分の準備をしておけば、Microsoft公式の手順通りにエクスポートしても「どの連絡先を出したのか」「どこにファイルを保存したのか」が常に追える状態になります。
CSVでもPSTでも、エンコードやインポート設定を気にする前に、まず“準備の3点セット”を終わらせることがプロの段取りです。

その後がラクになる：定期バックアップとアドレス帳整理の現場ワザ

「PC入替のたびにOutlookの連絡先でバタバタする」状態から抜け出すカギは、難しいツールではなく、“ゆるいルール”を先に決めておくことです。エクスポート手順そのものより、この章の内容を回しておいた方が、来年の自分の財布…ではなく“作業時間”が確実に増えます。

毎回バタバタしないための「月1バックアップルール」の決め方

現場で回しやすいのは、細かいポリシーではなく、次の3点だけを決めたシンプル運用です。

• いつ：毎月○日（給与日や請求日など、絶対忘れない日）

• どこに：社内決め打ちのフォルダー（例：X:\Backup\Outlook\連絡先）

• どうやって：CSV＋PSTの2本立てでファイルを保存

ポイントは「形式を1つに絞らない」ことです。
Outlook同士の移行用にPST、GmailやSaaS連携用にCSVを同じタイミングでエクスポートしておくと、あとから「このサービスはCSVだけ対応」「このPCにはPSTが便利」という場面でも慌てません。

バックアップ作業は5分で終わる一方、事故が起きたときの復旧は数時間〜数日かかることが多いため、「月5分で未来の自分を救う」投資だと割り切ると続きやすくなります。

フォルダ構造と命名ルールを変えるだけで、来年のPC入替が半分の手間になる

エクスポートで時間が溶ける最大要因は、「どのフォルダーが本番データか分からない」状態です。よくあるのは「連絡先」「連絡先1」「People」「テスト」など、似た名前のフォルダーが乱立しているケース。

次のように、構造と名前を標準化するだけで、エクスポート対象の迷いが一気になくなります。

• 最上位は「連絡先_業務用」「連絡先_私用」の2本に分ける

• 会社資産になるのは「連絡先_業務用」配下だけと決める

• 部署で運用する場合は「営業_顧客」「営業_代理店」など、用途が分かるテキストを必ず含める

こうしておくと、来年PCを入替えるときに情シスは「連絡先_業務用フォルダーだけを選択してエクスポート」すればよく、“どの連絡先を会社に残すか”の線引き議論を、その場で始めずに済みます。

「要らない連絡先」をどう判断するか、現場でのリアルな線引き

アドレス帳が肥大化すると、CSVインポート時のフィールド一致確認や重複チェックにも時間がかかります。削除基準を決めないと永遠に増え続けるので、現場で運用しやすい“3つのフィルター”を使います。

• 最終メール送受信が○年以上前（例：3年）かつ、社内で担当者がいない

• フリーメールかつ、名刺情報や会社名が登録されていない

• 同じ会社・同じ部署に最新担当者が別に登録されている

この3条件のうち2つ以上に当てはまる連絡先は、「要確認」ラベルを付けたフォルダーに移動し、一定期間（例：1四半期）誰からも異議が出なければ削除候補とする運用が現場では扱いやすいパターンです。

• いきなり削除せず、「連絡先_要確認」というフォルダーを作成

• エクスポート対象からは外し、PSTバックアップだけに残す

• 問い合わせが来なければ、次回バックアップ時に完全削除

こうした“ワンクッション運用”を入れておくと、情報漏洩リスクを下げつつ、Outlookのアドレス帳とエクスポートファイルの両方をスリムに維持できます。結果として、CSVやPSTの作成・確認にかかる時間が毎回確実に短縮されるので、PC入替もサービス連携も「儀式レベルの簡単作業」に変わります。

まとめ：エクスポート作業を「単発イベント」ではなく「事故らない運用設計」に変える

今日やるべきなのは「1回きりの手順」ではなく「次のトラブルをなくす仕組みづくり」

Outlookのアドレス帳エクスポートは、「今日さえ乗り切れればいい作業」にすると、次のPC入替や退職者対応のたびに同じヒヤリを繰り返します。
現場で事故を減らしている担当者は、手順そのものよりも次の3点を仕組みにしてしまいます。

• 形式のルール化

  Outlook同士の移行はPST、他サービス連携はCSVと決めておく

• 事前テストの固定化

  まず3件だけテストエクスポート→インポートして、文字化けやフィールドずれを確認する

• フォルダと保存先の整理

  業務用フォルダだけを対象にし、USBやクラウドはパスワード付き・アクセス権限定で保存する

この3つを「毎回のチェックリスト」に落としておけば、作業担当が誰に変わっても、大きなトラブルにはなりにくくなります。

この記事のどのパートをブックマークすべきか、立場別の読み返しガイド

迷わず次に動けるよう、役割ごとに押さえるべきパートを整理します。

今日のエクスポートが終わった直後が、一番現場感を持って運用ルールを決めやすいタイミングです。
「もう二度と同じ焦りは味わわない」という温度感が残っているうちに、自分の立場に合うパートをブックマークし、部門の簡易マニュアルに落とし込んでおくと、次回のPC入替やツール刷新は驚くほどスムーズになります。

執筆者紹介

主要領域はOutlookなど業務ツールの運用解説。Microsoft公式ドキュメントと一般的な運用知見を突き合わせ、現場で起こりやすい失敗パターンと回避策を体系化する記事を継続的に執筆しています。本記事でも「一発本番で事故らないこと」を軸に、実務でそのまま使える手順とチェックリストにこだわって構成しました。