Outlookのデータ移行で失敗しない極意｜現場が教える2025年最新版

Outlookのデータ移行で本当に怖いのは、「やり方が分からないこと」ではなく、「だいたい合っているつもりで始めて、静かに取りこぼすこと」です。新旧PCを並べ、PSTを書き出して読み込むだけなら、検索すればどのサイトでも分かります。それでも現場では、移行後に気付くトラブルが繰り返されています。送受信はできるのに連絡先が空、特定の年だけメールが消えたように見える、Outlook newではPSTインポート画面が見つからない。どれも「手順はなぞったのに」起きている事故です。

共通しているのは、「自分のOutlook環境の前提」と「Outlookのデータ構造」を確認しないまま、移行作業だけに取りかかったことです。POPかIMAPかMicrosoft 365か、classicかnewか、アーカイブPSTがあるかないか。ここを外したまま作業を進めると、後からの復旧コストが一気に膨らみます。逆にいえば、作業前に数分の診断と設計を挟むだけで、移行作業は一気に安全になります。

この記事は、「Outlook データ移行」と検索してたどり着いた個人ユーザーと、中小企業の情シス兼務担当の両方を対象に、現場の事故パターンとその回避手順を、操作解説より一歩踏み込んでまとめたものです。PSTさえ作れば安心という思い込みを解体し、Outlook new時代に合わせた正しい立ち回り方までを含めて、手元の環境でそのまま使えるチェックリストと設計図として構成しています。

まず、あなたのOutlookがPOP／IMAP／Microsoft 365のどれか、classicかnewかを三分で切り分け、そもそもどこまで移行が必要なのかを明確にします。その上で、ネット記事にはほとんど出てこない五つの事故パターンを具体的に取り上げ、なぜ起きるのか、どこで防げたのかを整理します。さらに、PSTに入るデータと入らないデータ、巨大PSTがなぜ現場で嫌われるか、年度別や部署別で分けておく意味など、「後から困らないための設計」に踏み込みます。

個人ユーザー向けには、旧PCから新PCへメールを一通も失わずに移すための実務ステップを、事前のスクリーンショットとフォルダコピーから、エクスポート・インポート時につまずきやすい画面の選択まで含めて整理します。中小企業の担当者向けには、二十台規模のOutlook移行をどう設計するか、アカウント種別がばらばらな社内をどう棚卸しし、一台だけテスト移行してから本番に入るかまでを、工数とトラブル確率の観点で示します。

後半では、Outlook newとclassic、Web版、モバイルアプリの役割を整理し、「一度classicで取り込み、その後newで使う」という現場での落としどころを明示します。さらに、会社PCで個人ツールにデータを逃がすリスク、「全部丸ごと移して」という指示への正しい聞き返し方、「古いメールは要らない」の一言が後から炎上につながる理由を扱い、最後にLINE相談形式で、ありがちな質問への実務的な答え方をまとめます。

この記事を読み進めれば、「とりあえずPSTでエクスポートしておけば大丈夫」という危うい感覚から抜け出し、自分の環境に最適な移行ルートを、自信を持って選べるようになります。

いきなり移行を始めると危険です：まず「あなたのOutlook環境」を3分で診断しよう

同じ「Outlook」でも、中身は人それぞれ。
ここを診断せずにPSTを作り始めると、「移行したのに肝心なメールだけない」「営業全員の連絡先が消えた」という事故が本当に起きます。

最初の3分でやることは、たった2つです。

• どの受信方式（POP／IMAP／Microsoft 365/Exchange）かを確認する

• Outlook classicかnewかを確認する

この2つが分かれば、「何を移すべきか」「何を触ってはいけないか」がかなりクリアになります。

典型パターン別チェックリスト：POP／IMAP／Microsoft 365 どれに当てはまる？

まずは自分がどのパターンか、机の上で30秒チェックします。

受信方式のざっくり診断フロー（どれに近いか）

• メールが「このPCにしかない」と言われてきた

→ POPである可能性が高い（要PST移行・要バックアップ）

• スマホやWebメールと同じ受信トレイが見えている

→ IMAPかMicrosoft 365/Exchangeの可能性大（サーバー側が主役）

• 会社でMicrosoft 365（旧Office 365）を使っていると言われた

→ ほぼMicrosoft 365/Exchange（基本はサーバー主役、ただしローカルキャッシュに要注意）

代表的な違いを一度、視覚で押さえておきます。

実際の確認手順（Outlook classic前提）もメモしておきます。

• Outlook右下のステータスバーに「接続先」の表示（Exchange／Microsoft 365など）が出ていないか見る

• メニューから「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」で、種類の列を確認する

  • 「POP」「IMAP」「Microsoft Exchange」「Microsoft 365」と書かれている

ここで複数種類が混在している会社PCは要注意です。POPの人だけ、移行設計を変える必要があります。

Outlook classic と Outlook new、どちらで開いているかを一瞬で見分けるポイント

次に、「どのOutlookアプリで開いているか」を確認します。
PSTでのデータ移行ができるのは今のところOutlook classic側だけで、new側にはPSTインポート機能がありません。

一瞬で見分けるポイントは次の通りです。

• タイトルバーの表示

  • 「Outlook」だけで、リボンや見た目が従来のOfficeと同じ → classicの可能性が高い
  • 左上に「新しいOutlookに切り替え」トグルがあった／デザインがWeb版にそっくり → newの可能性大

• アカウント追加画面

  • ウィザードが昔ながらの小さいダイアログ → classic
  • モダンな大きい1画面UI → newもしくはnew寄りUI

• メニュー

  • 「ファイル」タブから「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」がある → classic
  • そもそも「インポート/エクスポート」が見つからない → new

現場では、「新しいOutlookに勝手に切り替わっていて、インポートボタンが消えた」という相談が増えています。
データ移行をする日は、必ずclassicで起動しているかを先に確認しておくと、無駄なハマり方を避けられます。

よくある勘違い：「サーバーにあるから移行不要」でも失敗するケース

「うちはMicrosoft 365だから、Outlookデータ移行なんて要りませんよね？」
情シス兼務の担当者から、こう聞かれることが頻繁にあります。

サーバー側にメールがあるのは事実ですが、それでも事故が起こるパターンがあります。

代表的な「サーバー主役なのに油断すると危ない」ケース

• ユーザーが勝手に「ローカルデータファイル（PST）」を作り、古いメールをそこに手動アーカイブしていた

• 退職者だけ、過去メールをPSTにエクスポートしてローカルに保管していた

• IMAPだが、「古いメールだけPSTにバックアップしてPCから削除」の運用をしていた

これらは、サーバー上に残っていないメールが静かにPSTの中だけに閉じ込められている状態です。
PC入れ替えの際にこのPSTを見落とすと、「必要な時にだけ過去メールがない」という、一番ストレスの高い状態になります。

移行前の3分診断では、次の3点をざっとチェックしておくと安全度が上がります。

• 「データファイル」一覧を開き、PSTがいくつあるかを見る

• 「アーカイブ」「バックアップ」などの名前のPSTがないか確認する

• 退職予定者・役員クラスのPCだけは、PSTの有無を個別確認する

ここまで押さえてから移行方法を選べば、「とりあえず全部PSTで吐き出しました」という力技に頼らず、必要十分な範囲で安全にOutlookデータ移行を設計できます。

現場で本当に多い“事故パターン”5選：ネットに出てこないOutlook移行の落とし穴

「PSTファイルさえエクスポートすれば終わりでしょ？」
そう思ってクリックを進めた結果、営業部の予定表が真っ白になり、社内チャットが炎上する──現場ではそんな“事故”が珍しくない。ここでは、検索してもほとんど出てこない、プロが何度も目撃してきたパターンを具体的に切り分ける。

ケース1：Outlook newに変わっていて、PSTインポート画面がそもそも見つからない

PCを新規購入してOutlookを起動すると、いつの間にか従来の「Outlook classic」ではなく、見た目がスッキリした「Outlook new」が立ち上がるケースが増えている。
ここでよく起きるのが、「ファイル」メニューを探してもPSTインポートのボタンが見つからず、作業が完全に行き詰まるパターンだ。

Outlook newは、PSTファイルのエクスポート／インポートを前提とした設計ではないため、旧来の記事どおりに操作しても画面構成が一致しない。
移行作業中にUIが変わると、人は「自分が間違えた」と思いがちだが、実際は製品側の仕様の違いが原因ということが多い。

こうした場面では、一時的にOutlook classicをインストールしてPSTをインポートし、その後Outlook newで同じアカウントを設定して同期するという二段構えに切り替えると、遠回りに見えても結果的には安全で早い。
この「classicで取り込み→newで使用」という発想を持っているかどうかで、作業時間とストレスが大きく変わる。

ケース2：アーカイブ用PSTを忘れていて、特定の年だけメールが丸ごと消えたように見える

PC引越し後、「去年までのメールはあるのに、それより前が全部消えた」という相談は非常に多い。
原因のほとんどは、アーカイブ専用のPSTファイルをエクスポート対象から漏らしていることだ。

Outlookでは、容量対策や会社の運用ルールとして、次のような分割が行われていることがある。

• メインの受信トレイ用PST（現在3年分）

• 年度別アーカイブPST（2019年、2020年…）

• 部署共有用PST（営業共通、管理部共通）

ユーザー本人は「メールは全部この画面に見えている」ので1つに見えるが、実際には複数のデータファイルが裏でマウントされている。
移行前に[ファイル] → [アカウント設定] → [データファイル]タブでPSTの一覧をスクショしておくだけで、この手の事故はほぼ防げる。

ケース3：送受信はできるのに「連絡先が真っ白」で営業が業務ストップ

「メールは全部届いているのに、アドレス帳が空っぽ」というトラブルは、現場ではかなり痛い。営業担当のPCで起きると、見積書もフォロー連絡も一時停止だ。

発生理由はシンプルで、PSTエクスポートの際に「連絡先」フォルダーを含めていないか、IMAP／Microsoft 365の環境で「連絡先」がサーバー側とローカルで別管理になっているパターンだ。

エクスポート画面でフォルダーを選択する際、受信トレイだけを選ぶと、メールは移行できても予定表や連絡先は付いてこない。
「メール＝Outlookのすべて」と思い込むと、こうした非メールアイテムを見落としやすい。

移行前に、ユーザーと一緒にOutlookの左側フォルダー一覧を見ながら、「よくクリックしている場所」をすべて声に出して確認すると、連絡先やタスク、Todoリストの取りこぼしを防ぎやすくなる。

ケース4：旧PCが急に起動しなくなり、OSTしか残っていない

もっとも冷や汗をかくのがこのパターン。
Windowsが起動しなくなったPCからドライブだけ救出し、Outlookフォルダーを見ると、そこにあるのはPSTではなく「.ost」ファイルだけ。
ここで「データは全滅か」とパニックになる相談が多い。

OSTファイルは、ExchangeやMicrosoft 365で使用されるキャッシュ用のオフラインファイルで、原則としてサーバー上に本体のデータが残っている。
そのため、新しいPCで同じアカウントを設定すれば、多くの場合はメールや予定表が再同期される。

ただし、サーバー側の保存期間ポリシーや、自動アーカイブでPSTに逃がしていた期間があると、「サーバーに残っていない分」だけが抜け落ちることがある。
旧PCが不調になった時点でPSTバックアップを取っていないと、この範囲は復旧難度が一気に上がる。

こうしたリスクを下げるために、POP環境だけでなく、Microsoft 365環境でも定期的にPSTバックアップを作成しておく運用が、法人の現場では見直されつつある。サーバー依存だけにせず、「もう一段下に安全網を張る」イメージだ。

「PSTさえ作れば安心」は半分ウソ：プロが見るOutlookデータの本当の構造

「とりあえずPSTにエクスポートしてUSBで新しいPCへコピーすればOK」──現場で一番よく聞くこの一言が、後からメール迷子や復旧不能を招きます。Outlookのデータ構造をざっくりでも理解しておくと、移行もバックアップも一気に安全側に振れます。

PSTに入るもの／入らないものを、机の引き出しに例えてイメージする

Outlookは「机」、PSTファイルは「書類用の引き出し」と考えると整理しやすくなります。

PSTは「書類一式」は運べますが、「机の鍵（アカウント設定）」や「机の形（レイアウト）」は別で再設定が必要です。移行前に、どこまでをPSTで、どこからを手動設定にするか切り分けておくと、作業後の「送受信はできるのに連絡先が真っ白」といった事態を防げます。

ポイントだけまとめると次の通りです。

• PST＝メール・連絡先・予定表などのアイテムを保存する箱

• アカウント・パスワード・サーバー情報は別管理（移行されない）

• Exchange／Microsoft 365の場合、サーバー側にも同じデータがあり、PSTはあくまで“保険”扱い

会社で嫌われる“巨大PST”の裏側：性能低下・破損リスクと現場の分割ルール

「全部のメールを1ファイルに」を繰り返すと、数GB〜10GB級の“巨大PST”が生まれます。WindowsやOutlookが対応可能でも、現場では次の問題が噴き出します。

• Outlook起動や検索が異常に遅くなる

• バックアップ時にコピーエラーが出やすくなる

• 復旧ソフトやRecoveryツールを使う時に時間もコストも跳ね上がる

そのため、サポート現場では次のような「分割ルール」を決めて運用していることが多いです。

移行時に「旧PCの巨大PSTをそのままコピー」してしまうと、新しいパソコンでも同じ地雷を抱え込むことになります。データ移行は、Outlookの“大掃除と棚卸し”のチャンスと捉え、分割とアーカイブを同時に設計すると後々の管理が一気に楽になります。

PSTが1つだけだと復旧時に詰む理由：年度別・部署別に分ける発想

PSTが1つにまとまっていると、壊れた時のインパクトも1発で全体に及びます。特にPOP運用でサーバーにメールを残していないケースでは、PST破損＝過去のメールが丸ごと復旧できない可能性があります。

復旧しやすい構成にするための「設計視点」は次の通りです。

• 時間軸で分ける

  例：Mail_2021.pst、Mail_2022.pst、Mail_2023.pst
  → 破損しても影響範囲を1〜2年分に限定できる

• 役割・部署で分ける

  例：Sales_Mail.pst、Admin_Mail.pst
  → 退職者のデータ保管や異動時の引き継ぎがしやすい

• アーカイブと現役データを分ける

  例：Active_Mail.pst（直近1年）、Archive_XXXX.pst（過去分）
  → Outlookの検索・起動を軽く保ちながら、必要な時だけアーカイブを開く運用が可能

「PSTをどう分けるか」は、単なるファイル管理ではなく、業務をどこまで止めずに復旧できるかの設計そのものです。PC引越やWindowsのバージョンアップのタイミングで、この分割ルールを見直しておくと、次のトラブル時に「助かった」と感じる確率が高くなります。

個人ユーザー向け：「旧PC→新PC」でメールを1通も失わずに移すための実務ステップ

「新しいパソコンは届いたのに、Outlookのメールが怖くて触れない」──現場でいちばん多い悲鳴を、手順とチェックリストでつぶしていきます。

作業前に必ずやる「2つのスクショ」と「1つのフォルダコピー」

移行の失敗は、作業前の情報不足から発生します。まずは証拠を残す作業から始めます。

1. スクショその1：Outlookアカウント設定画面
   旧PCのOutlook classicを起動し、
   「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」をクリックし、一覧画面を撮影します。
   メールアドレス、アカウントの種類（POP/IMAP/Microsoft 365）を必ず確認します。

2. スクショその2：データファイルの場所
   同じ画面で「データファイル」タブを選択し、.pst / .ost のパスが見える画面を撮影します。
   C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Microsoft\Outlook
   のようなパスが見えていればOKです。

3. フォルダコピー：Outlookフォルダを丸ごとバックアップ
   エクスプローラーで上記パスを開き、フォルダ内をUSBドライブにコピーします。
   PSTファイルだけでなく、念のためOSTも退避しておくと「最悪戻せる」という保険になります。

ここまでが「やり直しが効く状態」を作る工程です。FMVサポートなどのメーカー手順より一歩手前の、プロが必ず挟む安全弁だと思ってください。

エクスポートからインポートまで：メーカーサイトより一歩踏み込んだ手順の“つまずきポイント”

PSTエクスポート自体は有名な方法ですが、トラブルになるのは細部です。

1. エクスポート時のチェック

   • 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
   • 「ファイルにエクスポート」→「Outlookデータファイル（.pst）」を選択
   • メールボックスの最上位（メールアドレス行）を選択し、「サブフォルダーを含む」に必ずチェック
   • 保存場所をUSBドライブに指定し、必要ならパスワードを設定（忘れると復旧不能なので慎重に）

   つまずきポイントは、途中のフォルダーを選択してしまい「送信済みアイテムが抜けた」「アーカイブフォルダーが落ちた」というパターンです。

2. 新PCでのインポート

   • 新PCにOutlook classicをインストール・起動
   • 先にメールアカウントの設定だけ行い、送受信できる状態にする
     （PSTファイルからアカウント設定は移行されません）
   • 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
   • 「他のプログラムまたはファイルからのインポート」→「Outlookデータファイル（.pst）」
   • USB内のPSTを参照し、「重複するアイテムはインポートしない」を選択
   • インポート先として、既存のメールボックスの最上位を選択

   よくあるのが「新しいOutlook（new）の画面で同じ操作をしようとして、そもそもメニューが見つからない」ケースです。PSTインポートはOutlook classicが前提なので、タスクバーのアイコンと画面デザインを見てどちらを開いているかを確認しましょう。

相談チャット再現：「とりあえず移したら迷子メールだらけです…」というお問い合わせの中身

実際の相談内容を分解すると、原因はほぼパターン化されています。

• 相談1：「受信トレイはあるのに、昔のメールだけ別フォルダーにばらばらです」

  →インポート時に「新しいフォルダーにインポート」を選んでしまい、PST内の構造がそのまま別ツリーで作成されている状態です。フォルダーをドラッグして整理し直すか、再インポートで「既存のフォルダーにアイテムをインポート」を選び直します。

• 相談2：「アドレス帳が真っ白で、連絡先だけ見つかりません」

  →エクスポート元で「連絡先」が別PSTに分かれていた、またはアカウント種別がIMAPで、連絡先がローカルの別データファイルに保存されているパターンです。データファイルタブのスクショがあれば、どのPSTから取り込むべきかを逆算できます。

• 相談3：「新しいOutlook画面でPSTを開けない」

  →Outlook newはPSTインポートに対応していません。Microsoftも公式ドキュメントで、PSTの操作はclassicの画面から行うよう案内しています。対処としては、classicでPSTを開いてプロファイルにマージしたうえで、最後にnewを使い始める流れが現実的です。

「とりあえずエクスポートしてインポートしたら、見え方が変わってパニックになる」状態は、事前のスクショとフォルダコピーがあればほぼ巻き戻し可能です。作業そのものよりも、最初の5分でどこまで情報を押さえるかが、メールを1通も失わない最大の分かれ目です。

中小企業の情シス兼務向け：20台まとめてOutlook移行するときの“設計図”

「20台くらいなら根性で1台ずつOutlookを設定すればいいか」──この発想が、残業とクレームの入口になる。ここでは、現場でミスを減らしてきたやり方を“設計図”としてまとめる。

1台ずつ手作業は危険？工数とトラブル確率から考える「やり方の選び方」

Outlook移行は「操作そのもの」よりも、「パターン設計」の善し悪しで成否が決まる。まずは、どの方法で攻めるかを冷静に選ぶ。

20台規模なら、「サーバー同期で済む人」と「PSTが必要な人」を切り分け、PST移行対象をできるだけ減らす方が、トラブル確率も工数も一気に下がる。

アカウント種別がバラバラな社内を、移行前にどう棚卸しすると事故が減るか

一番事故が起きるのは「全員同じだと思い込んでいた」ケースだ。移行前に10〜15分で良いので、次の棚卸し表を埋めておくと、後の問い合わせが激減する。

特にPOPアカウント＋ローカルpstのユーザーは、旧PCが起動しなくなるとメール復旧が一気に難しくなる。棚卸しで「POP＋ローカル保存」をあぶり出し、優先的にバックアップと移行を実施する。

本番前に1台だけ“テスト移行”する意味：上司には見せないリハーサルの裏側

20台まとめての移行で、プロが必ず入れるのが「パイロット1台」のテストだ。やることはシンプルだが、効果は大きい。

• 移行対象ユーザーを1人選び、旧PCでPSTエクスポート(メール/連絡先/予定表を選択)

• USBドライブやネットワークドライブにPSTファイルをコピー

• 新PCにOutlook classicをインストールし、PSTをインポート

• 送受信テスト＋検索テスト(特定の年/件名/相手先で検索)

• 「失われているフォルダーがないか」をユーザーと一緒に画面を見て確認

この1台で「想定外のフォルダー」や「Outlook newしか入っていないPC」などの地雷が見つかる。ここで問題が出るほど、本番前に修正できるポイントが増える。逆に言えば、このテストを省くと、20台分の同じミスを一気に踏むリスクが跳ね上がる。

20台を安全に終わらせたいなら、「気合いで1台ずつ設定」ではなく、「棚卸し→方式選定→パイロット1台」という3ステップをテンプレ化してしまう方が、結果的に早くて静かに終わる。

「Outlook new時代」の正しい立ち回り方：classicとの付き合い方をアップデートする

「Outlook newに変わった瞬間、いつもの“PSTインポート”ボタンが消えた」──現場で今、一番多い悲鳴がこれです。
Outlook データ移行で事故を防ぐには、「newを主役」「classicを作業用ツール」として割り切る発想が欠かせません。

なぜ多くの解説記事がいまだにOutlook classic前提なのか

理由はシンプルで、PSTエクスポート／インポートを正式に握っているのが依然としてOutlook classicだからです。Microsoft公式ドキュメントも、PSTファイル操作は基本的にclassic画面で説明されています。

移行手順がclassic前提になりがちな背景を整理すると次の通りです。

多くのネット記事がclassicを前提にしているのは古い情報だからではなく、今もなお「唯一のPST入り口」であり続けているためです。
つまり、「普段はnewでOKだが、移行作業のときだけclassicに“降りる”」という2階建て構造を理解しているかどうかが分かれ目です。

Outlook newとWeb版Outlook／モバイルアプリの役割分担を、移行の観点から整理する

メールを見る画面が増えすぎて、どれが本体か分からなくなりがちですが、移行という一点で見ると役割はかなりはっきりしています。

ポイントは2つです。

• サーバー型（Microsoft 365／Exchange／IMAP）のメールは、「どのOutlookで見るか」でなく「どのアカウントでサインインするか」が本質

• ローカルデータ（POPやPSTバックアップ）を扱えるのは、現時点ではclassicだけ

そのため、パソコン引越やバックアップでPSTファイルを扱う場面では、どれだけnewやWeb版を普段使いしていても、一度はclassicをインストールして起動する必要が出てきます。

「一度classicで取り込み→newで使う」現場での落としどころ

現場で安定している運用パターンは、classicは「作業用ドライバー」、newは「普段乗るマイカー」と割り切るやり方です。

典型的なステップは次の流れになります。

1. 旧PCのOutlook classicでPSTエクスポート（メール・連絡先・予定表を選択）
2. PSTファイルをUSBドライブやネットワーク経由で新PCへコピー
3. 新PCにOutlook classicをインストールし、同じアカウント設定を追加
4. classicでPSTインポート後、フォルダ構造と件数を確認
5. 問題がなければOutlook newを起動し、同じメールアカウントで利用開始

この「取り込み専用classic」を徹底すると、次のメリットがあります。

• newしか知らないユーザーにも、「データの安全確認はclassic画面でやる」と説明しやすい

• トラブル発生時に、Microsoft公式サポートや他の技術者と同じ画面を共有して原因を詰めやすい

• 将来、Outlook newがPSTに正式対応しても、「まずclassicでバックアップ」という保険を残せる

Outlook データ移行の現実は、「どのバージョンを使っているか」よりも、
「どの画面でPSTを扱い、どの画面を日常利用にするか」という役割設計で9割が決まると言ってよいレベルです。
newだけを見て「PSTインポートのボタンがない」と悩み続けるより、classicを一時的に呼び出す前提で設計したほうが、パソコン引越の事故率は確実に下がります。

ネット記事が語らない「やってはいけない」Outlook移行の裏ルール

Outlookのデータ移行は、「クリックしてpstファイルをコピーすればOK」というレベルで語られがちだが、会社PCやMicrosoft 365環境では、やり方次第でコンプライアンス違反や情報漏洩に直結する。現場でヒヤッとした場面だけを抜き出すと、次の3つは覚えておかないと危険ゾーンに足を踏み入れやすい。

会社PCで個人ツールにデータを逃がすリスク：便利さとコンプラ違反の紙一重

「USBメモリにpstを保存して持ち帰り、自宅PCのOutlookにインポート」
この一手間で、あなたは社内規程のグレーゾーンから一気にアウト側へ転落することがある。

典型的な“やりがちNG”を整理するとこうなる。

社内規程では「会社アカウント以外への業務データ保存禁止」と明記されているケースが多い。
迷ったら、「この保存先、退職後も自分だけでアクセスできてしまわないか」を基準に考えると判断を誤りにくい。

上司から「全部丸ごと移して」と言われたときに、プロがまず聞き返す一言

情シス兼務の担当者が、上司や利用者からよく言われるのがこのフレーズ。

「旧PCのOutlookを全部、新しいPCに丸ごと移行しておいて」

ここで即「はい」と言ってしまうと、後からトラブルの火種になる。現場のプロが必ず最初に返すのは、次の一言だ。

「全部とは、どこからどこまでを指しますか？」

この一言で、次のポイントを具体的に確認できる。

• 対象の範囲

  • メールだけか、連絡先・予定表・Todoまでか
  • アーカイブ用pstファイルも含めるのか

• 期間の範囲

  • 直近2年分だけでよいのか、Windows XP時代からの全履歴が必要なのか

• アカウントの範囲

  • Microsoft 365のExchangeオンラインだけか、従来のPOPアカウントもあるのか

このすり合わせをせずに巨大pstを作成すると、1ファイルが数十GBになり、Outlookの起動が極端に遅くなることがある。
「全部丸ごと」を鵜呑みにせず、「業務で本当に使うデータの範囲」を一緒に決めることが、技術以前の重要な設計作業になる。

「古いメールは全部要らない」の一言で、後から大炎上するパターン

移行作業の打ち合わせで、利用者がこう言い切る場面も多い。

「古いメールは全部削除で大丈夫です。新しいPCでは使いません」

この言葉を真に受けてデータを切り捨てると、数週間〜数カ月後に炎上しやすい。

• 見積・契約の証跡メールが、税務調査やクレーム対応で急に必要になる

• 退職者のOutlookデータから、後任が引き継ぐべき案件履歴が見つからない

• 管理部門から「電子メールも保存義務の対象」と指摘される

技術的な防御策としては、「削除」ではなく「アクセス権を制限したバックアップ」に置き換えるのが現実的だ。
具体的には、読み取り専用のpstとしてサーバー側の管理フォルダーに保存し、日常のOutlook画面からは見えない形にしておく。
利用者の「要らない」という感覚と、会社としての「保存しておくべき」という義務のギャップを、移行設計で吸収しておくことが、後から自分を守る盾になる。

よくあるQ&Aを“LINE相談”形式で再現：その場しのぎではない答え方

相談例1：「新しいOutlookでPSTが開けません…データ壊れましたか？」

ユーザー
「新しいパソコンでOutlookを開いたら、見た目がガラッと変わってて“インポート/エクスポート”が見当たりません。PSTファイルが壊れたんでしょうか…？」

サポート
「PSTは壊れていない可能性が高いです。Outlook newがそもそもPSTインポート非対応なだけ、というパターンが現場ではほとんどです。」

サポート
「次の順で確認してみてください。」

• Outlookの右上に「新しいOutlook」トグルスイッチがあるか確認

• あれば一度オフにしてOutlook classicを起動

• classic側で「ファイル」→「開く/エクスポート」→「Outlookデータファイルのインポート」を実行

サポート
「classicでPSTをインポートしてから“新しいOutlookをオン”に切り替えると、Microsoft 365やExchangeならサーバーに同期され、new側でもメールが使えるようになります。
ローカルだけで完結するPOPアカウントの場合は、引き続きclassicでの運用を前提にした方が安全です。」

相談例2：「移行したのに、検索すると一部のメールしか出ません」

ユーザー
「PSTをインポートしてメールもフォルダーも見えているのに、検索すると最近1年分くらいしかヒットしません。消えたんでしょうか？」

サポート
「画面に見えているなら、消えてはいません。検索インデックスが追いついていないか、検索対象から外れていることが多いです。」

サポート
「まずはここをチェック。」

• Outlookで「検索ボックス」をクリック

• リボンの「検索ツール」→「検索ツール」→「インデックス作成の状態」

• 「インデックスは完了しました」になるまで待つ（数万通なら数十分〜数時間かかることも）

サポート
「それでもダメなときは、Windows側でOutlookのインデックス対象を見直します。」

• コントロールパネル→「インデックスのオプション」

• 「変更」→Microsoft Outlookにチェックが入っているか確認

• 「詳細設定」→「再構築」

サポート
「大量のメールを1つの巨大PSTに詰め込むと、インデックスと検索が極端に遅くなります。現場では年度ごとや案件ごとのPSTに分割して、検索対象を絞る運用に切り替えるとトラブルが激減します。」

相談例3：「退職者のOutlookデータだけ会社で保管したいのですが…」

ユーザー
「退職した社員のメールだけ会社で保管しておきたいです。旧PCを廃棄する前にPSTで抜けば大丈夫ですよね？」

サポート
「技術的には可能ですが、やり方と保管ルールを間違えるとコンプラ事故の温床になります。現場では次の表で線引きします。」

サポート
「Exchange OnlineやMicrosoft 365を使っているなら、本来はサーバー側のメールボックス保持ポリシーや訴訟ホールドで管理するのが王道です。PSTは“どうしてもローカルに退避が必要なときの補助輪”と考えてください。」

サポート
「POPでローカル運用していた退職者PCの場合は、次の最低限を押さえておくと安心度が上がります。」

• 退職者のメールアカウントを切断してからPSTエクスポート（新着メール混入を防ぐ）

• PSTには氏名＋退職年月＋部署名を含めたファイル名を付ける

• 保管期間と削除条件を就業規則や情報管理規程に明文化しておく

サポート
「“とりあえず全部残す”ではなく、“いつ・誰が・どこまで見られるか”を決めてからエクスポートに進むと、後のトラブルをかなり避けられます。」

執筆者紹介

主要領域はOutlookのデータ移行やPCリプレース時のメール環境設計など、マイクロソフト公式情報と国内ベンダー各社の公開資料を比較・検証して整理することです。本記事も、複数のサポート記事の手順・注意点を突き合わせ、一般ユーザーと中小企業担当者が「失敗しにくい選択」をできるよう、条件分岐とリスク説明を重視して構成しています。